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ジロ7勝を上げたイネオスの新たな戦術 影のMVPは誰か?

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Image by Dariusz Sankowski from Pixabay
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これまでのイネオスのグランドツアーの勝利の方程式は、トレインを組んで山と平地を支配すること。

守備的な戦いが主だった。これは見ている側からすると全く面白くない展開。それは主催者にとっても同じだ。

レースは常にアグレッシブでなければ面白くない。

今年のジロでは21ステージ中、イネオスは7勝をあげ3分1の勝利を手にした。しかも最後には総合優勝まで飾ってしまう。勝ったのはテイオ・ゲイガンハート。来年以降、彼がエースとなれる保証はない。

だが、優勝した選手がアシストに回るのもおかしな話ではあるけれど、彼がエースとなるのは何年か先かもしれない。今年のジロを簡単に振り返ってみよう。

 

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開かれたジロ

ASTANA

多くの総合系ライダーが最後までレースをしていない。

まずは、ミゲルアンヘル・ロペス。ジロ第1ステージの個人TTのゴール前で落車。沈んだ排水管を踏んでしまったのが原因。

アシストで参加していたが、セカンドエース的立場でもありチームにとっては大きな損失だった。

 

さらに、アスタナはエースだったアレクサンドル・ウラソフが不調のため総合から脱落。ツールを胃腸障害でリタイヤしたが、体調は戻ってこなかった。

 

 

Mitchelton-Scott

サイモン・イェーツはコロナ陽性反応で離脱。チームはスタッフからもコロナ陽性反応が出てしまいジロからチームごと撤退となってしまう。

 

 

 

Team Jumbo-Visma

エースのステフェン・クライスヴァイクに陽性反応が出てしまい、チームはジロから撤退。これで2チームがジロからいなくなった。

チーム力も高く優勝候補だった2チームがいなくなるという事態になり、最後までレースが出来るのか心配されていた。

 

 

INEOS Grenadiers

なんといっても、第3ステージでゲラント・トーマスがニュートラルでボトルを踏んで落車リタイヤしたのが大きい。

 

 

この時点で、テイオ・ゲイガンハートは総合22位・3分14秒遅れ。そして、彼は第3ステージのエトナへの登りでは最高のライダー達についていけなかった。

彼に全てを託して、全員でアシストに回るという戦術をイネオスはとらない。これが逆にジロを面白くすることに繋がるのだからレースは面白い!

 

 

アシストの必要のなくなったイネオスのメンバーは、いつものグランドツアーでは見られない逃げに毎ステージ乗ることになる。

 

逃げにメンバーを送り込むイネオス

第5ステージではフィリッポ・ガンナが第1ステージに続いての勝利。逃げからの単独アタックでの勝利は素晴らしい。

TT以外でもステージ優勝できる力をしっかりと見せてくれた。

 

この後もイネオスは逃げで勝利を目指すことを続ける。

サルバトーレ・プッチョは第8ステージで2位。ジョナタン・カストロビエホも第9ステージで2位。ベン・スウィフトは第7ステージ4位、第10ステージ4位、第16ステージ6位と力を存分にみせつけた。

これらの逃げが実ったのは、第12ステージ。

ジョナタン・ナルバエスは雨のステージで勝利を上げる。これでチーム3勝目だ。

 

第14ステージの個人TTで再びフィリッポ・ガンナがステージ優勝。貫禄をみせつけた形となる。これでチーム4勝目。

 

総合を目指すきっかけとなるレース

テイオ・ゲイガンハートは第3ステージの総合24位から少しずつ順位を上げて、第15ステージの優勝で一気に総合11位から4位にジャンプアップ。

このステージで、トッブのアルメイダを追い落とすために、Sunwebはジェイ・ヒンドレーが先頭を引き倒す。

テイオ・ゲイガンハートはウィルコ・ケルデルマンと共に3人でゴールまで走り、しっかりとゴールをゲット。

 

ついに、再びイネオスがジロでの総合を目指す確信を抱いたステージとなった。このステージでマリアローザのアルメイダとウィルコ・ケルデルマンのタイム差は15秒となる。

 

そして、運命の第18ステージで全てが変わってくる。このステージでアルメイダは完全に遅れ、4人で逃げていたグループからはウィルコ・ケルデルマンも遅れる。

テイオ・ゲイガンハートはローハン・デニスが切れたラスト6キロから引きはじめ、ジェイ・ヒンドレーが最後にゴールスプリントで勝利。

 

この戦術でSunwebはステージ勝利とマアリローザ獲得という快挙を成し遂げる。狙った通りの二つの目標をクリアーした訳だ。

短期的には、良かっただろう。だが、最終ステージでTTに劣るジェイ・ヒンドレーで勝負するならば、ここはジェイ・ヒンドレーがアタックをかけてタイム差を作っておく作戦もあったはずだ。

チームはあくまでエースはウィルコ・ケルデルマンとした訳だ。タイム差が少なければTTで逆転できるし。

結果論となるが、どちらのプランを選ぶかで優勝の行方も変わったと言っても良いだろう。

 

MVPはローハン・デニス

 
 
 
 
 
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You thought his Stelvio ride was impressive? @rohandennis does it again, and how 👏👏👏

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第20ステージの激戦は素晴らしかった。これをお膳立てしたのはローハン・デニスの驚異的な引き。

ジェイ・ヒンドレーがアタックをかけて、引き離なす。だが、遅れても再度戻ってきて先頭を引く姿は凄まじかった。

普通はアタックをかけられれば精神的にも切れてしまい、お役御免となるのが通常だ。

 

間違いなくローハン・デニスの活躍がなければ、テイオ・ゲイガンハートの勝利もなかった。タイム0秒で迎えた最終タイムトライヤルだったが、これまでの二人の対戦は8勝2敗。

クライマーのジェイ・ヒンドレーが勝てる見込みはなかったと言える。

 

開かれたジロとなったために、イネオスもステージ優勝を狙うという戦術にするしかなかった。だが、チーム総合力の高さは山岳で有利に働く。

今回は、ローハン・デニスの驚異的なアシストで総合優勝もたぐり寄せた。テイオ・ゲイガンハート一人だけで勝ちとった総合優勝ではない。

影のMVPはローハン・デニスだと思う。

だが、どうせ勝つならば今回のようなオープンな戦術で勝つ姿をまた見てみたい。こんなジロは二度と見れないだろうけれども、楽しませて貰った。

イネオスの戦術が来シーズンから少し変わることを期待したい。エース以外の選手の活躍だってみてみたいのだから。

 

 

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