INEOS Grenadiersのフィリッポ・ガンナは10月8日にアワーレコードにチャレンジする。
ピナレロは、フィリッポ・ガンナの挑戦を後押しするために、3Dプリントにより、既存のカーボン技術では再現できない新しい形状と機能を導入したPinarello Bolide F HR 3を発表した。
面白いのは、ザトウクジラに着想を得た斬新なフレーム形状、UCIの最近削除されたフレームの3:1ルールの制約を越えてチューブプロファイルを伸ばしていること。
また、広いフロントフォークを真っ向から否定した狭いフロントフォークを採用していることだ。
Pinarello Bolide F HR 3
3Dプリントを活用することにより、内部補強を追加し、まったく新しい形状のヘッド チューブを作成することが可能になっている。
重要なことは、カーボンの金型製作の従来の時間的制約に縛られなくなったため、開発時間を大幅に短縮することもできることだ。
3D プリントを使用することで、強度と剛性をエアロ効果と融合させながら、完璧なサイジングを実現できる。
そのため、ガンナのBolide F HR 3Dは、身体構造に合わせて特別に作られている。
3D技術に関しては、Metron Advanced Equipmentと提携して製造。世界初の3DプリントされたMythosElixステムを作成したブランドだ。
Pinarello Bolide F HR 3D フレームセットとシートポストは Scalmalloy製。
Scalmalloyは、スカンジウム、アルミニウム、マグネシウムの合金で、ピナレロによれば、3Dプリント用に特別に設計された航空宇宙材だと言う。
フレームは5つのパーツで構成され、フロントトライアングルは3つのパーツで構成され、シートステー/チェーンステーはさらに2つのパーツで構成されている。
これらの部品は個別に作成され、細心の注意を払って洗浄。サポートを取り外した後、航空宇宙グレードのエポキシ樹脂を使用して部品を結合している。
ザトウクジラの空気力学
フレームで最も目を引くのが、シートチューブとシートポストのデコボコした形状だ。
この機能はザトウクジラのひれに見られる結節を模倣するように設計されている。
2016年に提出された特許出願で、この概念を自転車フレームに適用したアデレード大学の研究を引用している。
Zippのホイールも、鋸歯状のリムプロファイルに同様のアイデアを使用している。
ピナレロは、シートチューブとシートポストが自転車全体の抗力の39%を占めており、ライダーの脚の動きによって乱気流が発生するため、空気の流れを管理するのが特に難しい領域であると述べている。
これらの構造の前縁に尾根を追加すると、適切なサイズの場合、この分離効果を最小限に抑え、抗力を減らすことができると言う。
この抗力の減少は、バンプ間の谷に縦方向の渦を生成し、ピークの後ろの流れを付着させたままにすることによって達成される。
ホイール、ジャージなどに次いで、ついにフレームにもデコボコの形状が現れた感じだ。
フレーム形状の進化
UCIはフレームの規制を2021年に緩和している。これによりフレームのチューブ寸法に関して、タイムトライヤルバイクに近いロードフレームも最近は見られるようになってきた。
正確は数値はPinarelloから発表されていないが、80mmに近いのは間違いない。縦方向は最大限の数値に近いが、前からみた形状は限りなく薄く作られている。
ホイールハブをリアで120mmから89mmに、フロントで100mmから69mm。ボトムブラケット (BB) を70mmから54mmに狭めている。全ては実験結果から導き出されている。
これは、次のフォーク形状にも同じことが言える。
狭いフォーク形状
最近のバイクではフォークの形状は広くなる傾向にあった。例えば、顕著なのはロータスとホープが協力して作成したHB.Tトラックバイクだ。
だが、これについてPinarelloは以下のように意見する。
「最近、非常に幅の広いフォークとシートステーを備えた自転車をいくつか見てきた。
彼らは働いていますか? これまでになんとか収集できた証拠は明確ではありません….。一般に、そのような設計では、バイクはより多くの抗力を生み出しすが、十分に洗練されていれば、ライダーの抗力をライダーの抗力ペナルティよりも多く落とすはずだ。
しかし、私たちの場合、結果が不安定すぎて、潜在的な利益がそのような設計を採用するのに十分なほど一貫していなかったと判断。そのため、ディスクホイールに近い狭いフォークとシートステーの古典的で実績のある方法を採用した。
この方法はまた、軽量なソリューションも生み出すことが出来る。」
ホイールは、カスタムのPrinceton CarbonWorksディスクホイールを使用。
チューブレスのContinental GP5000 TTタイヤ、WattShop Cratus Aeroクランクとカーボンファイバートラックチェーンリング、Muc-Offの最適化トラックチェーンが装着される。
フィリッポ・ガンナのPinarello Bolide F HR 3D spec
- フレームセット: Pinarello Bolide F HR 3D、3D プリントされた Scalmalloy
- ハンドルバー:Pinarello、3D プリント チタン
- ホイール: Princeton CarbonWorks トラック スペシャル
- タイヤ:コンチネンタル GP5000 TT
- クランクセット: WattShop Cratus Aeroクランクと WattShop Cratus カーボンファイバーチェーンリング
- チェーン: Muc-Off に最適化された Izumi Kai 1/2インチ トラックチェーン
- サドル: Fizik Ares TT
Pinarelloによると、パーツの組み合わせ、個々の設定によりエアロのピークにはほど遠いと言っている。まだまだ、進化するのは間違いない。
なお、Bolide F HR 3D 、現在ピナレロの公式販売店で注文可能となっている。ただ、価格は凄いことになりそうだ。
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