NHKの「クローズアップ現代」を見られた方もおられると思います。(2018/10/11)
「乳酸で持久力アップ! 意外なトレーニング法 萩野公介選手」と題して紹介されてました。
これまで乳酸がたまると、疲れて運動出来なくなると言われてましたが、最新の科学ではそれが違うということがわかってきたのです。
なんと、乳酸を沢山作り出して萩野選手はオリンピックで金メダルが取れたとか。
乳酸とは
乳酸は血糖(ぶどう糖)が分解されると生成されます。身体のメインエネルギー源として、脳や神経の正常機能のほか、激しい運動にも必要不可欠とされています。
乳酸は生産される時に、酸素を必要としません。なので無酸素代謝と呼ばれます。
この事から、多くの人は血液が充分な酸素を筋肉に供給しない時に乳酸が生産されると考えてきました。例としては、短距離走。パワーリフターなどの息を止めて全力で運動するような状態です。
ところが、研究者は、充分な血液が酸素を供給している時においても、筋肉内で乳酸が生成される事実を発見しました。
乳酸は、筋肉内における、血液による酸素供給があるなしに関係なく、生産され続けていることがわかってきたのです。
1907年、ケンブリッジ大学のウォルター・モリー・フレッチャーとフレデリック・ガウランド・ホプキンズが、乳酸と筋肉の疲労に関する論文を発表しました。
「疲労した筋肉には乳酸の増加がみられた。」
運動に伴って、乳酸が蓄積される研究は、これが最初だったようです。
1929年にアーチボルド・ヴィヴィアルン・ヒルが筋肉を材料にした代謝の研究を行い、筋肉で発生する熱の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
ヒルは、カエルの筋肉や血漿を使って乳酸を測定し、1929年に疲労の原因は乳酸であるとの仮説を提唱しました。
これが、最近まで信じられていた乳酸が疲労の原因であるという言説の始まりのようです。
30年以上前でも、保健体育の授業では「乳酸は疲労の原因物質」と言われていました。
「これまで筋肉の疲労と乳酸とは、同一と考えられてきました。しかし、むしろ逆に乳酸は筋肉疲労を和らげてくれる物質と分かった。」というのが現在の説です。
乳酸が悪者でないという説は、2004年に「Science」誌に掲載された論文でそれまでの乳酸についての常識とされた乳酸疲労物質説が否定されたことによります。
乳酸トレーニングでアスリート能力の向上
番組の中では、ひとつの実験を行っていました。
1匹のマウスに乳酸を投与して、走らせ続けました。
乳酸が疲労物質の原因ならば、他のマウスに比べて動きが鈍くなるはずですよね。
しかし、30分たっても他のマウスと同様に走り続けることが出来たのです。運動時間と運動能力は全く変わらなかったということです。
最新の研究では、これまでの定説をくつがえす乳酸の新しい性質がわかってきたのです。
さらに研究では、持久力の向上がみられるということもわかってきました。
- サンフレッチェ広島(Jリーグ サッカー)
- 松田丈志(水泳・オリンピック代表)
- 萩野公介(水泳・オリンピック金メダル獲得)
そして、一般の市民ランナーや高齢の人でも乳酸トレーニングが実践出来ることが、わかってきたのです。
乳酸は持久力アップにつながる
では なぜ乳酸がこの持久力アップにつながるのでしょうか。
これには、筋肉が関係しています。
筋肉の中には 速筋線維と遅筋線維この2つの線維があります。
遅筋線維の特徴
- 持久力に大きく関わります。
- 遅い速度で収縮し、小さな力を長時間発揮し続けることができる
- マラソン選手はこれが多いということが知られています。
速筋線維の特徴
- 速筋線維の方はあまり持久力がありません。
- 短距離選手が これが多いということが知られています。
- スピードを出す能力があります。
- 乳酸は速筋から発生する。
鍵を握るのが ミトコンドリアです。
ミトコンドリアを増やす
ミトコンドリアというのは遅筋に多く存在します。
この速筋で作られた乳酸はミトコンドリアのいわば餌(エネルギー)となります。
ミトコンドリアは乳酸を食べるかのように使って、遅筋の新たなエネルギーとなって持久力を発揮するということになります。
更に トレーニングを重ねていくと、筋肉が動いて乳酸が増えていきます。
運動して乳酸が出る
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ミトコンドリアが増える
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ミトコンドリアが乳酸を使ってエネルギーを出す。
乳酸がミトコンドリアを増やしてくれるんですね。
萩野選手の最大乳酸値
番組の中では、萩野さんの乳酸の値が、19.8で凄いと声が上がってました。
では、最大乳酸値はどれくらいなのかというと24ぐらいあるそうです。
そうなると、全身にミトコンドリアだらけということになりますね!
つまり、 萩野選手の場合には、速筋繊維がおおく、乳酸が発生しやすい。そしてミトコンドリアも多いということになります。
水泳の場合には、2~3分のきつい運動です。その競技で勝つためには
- 速筋線維のスピード
- 遅筋線維の持久力
この両方を兼ね備えてるということが必要となります。
乳酸をいかしたトレーニングに年齢の制限はない
年齢に関係はないので、一般の人がトレーニングする時でも、ある程度の乳酸が出るような強度を知ることが非常に大事になります。
乳酸の値を測定する方法
- 分速100メートルで3分歩く
- 3分後の乳酸の値をはかる
- 速度を上げながら7回計測
ここを境に乳酸が一気に増え始めていました。
この乳酸いき値を上回る速度で走れば、乳酸が十分に出てミトコンドリアの増加を促す運動強度となります。
- トレーニングをより効率的に行うことができる
- 短い時間で 効率的にトレーニングを行うことができる
ランナーの場合の乳酸トレーニングの実例
週に1回、出勤前に集まるランニングサークル。
乳酸トレーニングを実践しているランナーが胸に心拍計をつけて走ります。
実例の男性の乳酸いき値は1km 4分23秒。分速にすると 228メートルです。
実際のトレーニングは
- 乳酸いき値より少し速い速度で1kmを5回
- 休憩をはさみながら走ります。
サークルに入る前はほぼ毎日走り、月400kmもの走り込みをしていたそうです。
それが、今では半分以下に短縮。
それでも 記録は大幅に伸びフルマラソンで念願のサブスリー達成。3時間切りを果たしました。
練習時間も減ったことで、一日が有効に使えているそうです。
高齢者の場合の乳酸トレーニングの実例
走るのが難しいという高齢者でも無理なく取り組め、乳酸を意識したトレーニング方法があります。
早歩きトレーニング
- 息を整えるための、ゆっくり歩きをはさみながら行います。
- ポイントは早歩きの速度。目安は全力で歩く速度の70%以上の速度。
- 高齢者は 筋力が低下しているので走らなくても十分 乳酸が出ます。
- 3分早歩きを5回繰り返します。合計で15分でOK。
インターバル速歩のポイント
ポイント1 早歩きの速度
- 歩いた感覚を 「とても楽」「楽」「ややきつい」「きつい」の4段階に分けます。
- 「ややきつい」と「きつい」の間ぐらいが乳酸が出る速度だといわれています。
- 機械で測定していなくても、一応の目安になります。
ポイント2 正しい歩き方
- 腕は軽く後方に引く感じで振ります。
- 胸を張った正しい姿勢
- 大股で歩く
ポイントの3 運動の回数
- 3分の早歩きを5回頑張る
- 3分間ゆっくりと歩く。
- 3分がきつい場合には、1日で合計15分以上早歩きをする
- 週に4日以上を目安に行う
ですから合計で15分以上となっています。合計15分以上早歩きをすれば、効果に差はないそうです。
萩野公介選手の乳酸トレーニング方法
萩野選手の競技種目は、400m個人メドレーです。
練習内容としては、
- 100mを4本であったり
- 50mを8本にしたり
- 同じ400mでも 短く分る
- それを何セットか繰り返す。
つまり、高齢者の方々がやってたようなことをオリンピック選手もやっています。
ほとんどしないですね。 もうきつすぎて、とてもじゃないですけど 耐えられない。
もしできたとしても次の日、同じことができないんですね。
やはり毎日続けることが大事なので短い距離で 何本も繰り返しして、常にトレーニングを続けるということが大事かなと思います。
- 目標となる距離を細切れにして乳酸トレーニング
- 高い乳酸レベルを作っていく
- ゆっくり泳ぐ時には乳酸を出さないようにする
- 乳酸とタイムを組み合わせて自分の体調と練習の強度を調整
- 乳酸を測る時のメニューはきつい練習となる
- 乳酸を自分の中で消化していって次のレースにつなげていく
- 乳酸は、一番大切な友達でもある
自転車選手の場合には
自転車の場合にあてはめると、まさにパワートレーニングですね。
全力で走れる走力の70%をFTP値とする訳ですから、まさに乳酸トレーニングだと言えますね。
あとは、どれくらいの頻度とインターバルの長さを調節することだけですね。
自転車のパワートレーニングについては以下で記事にしています。
乳酸いき値を測れる時計
乳酸いき値を手軽に一般の人でも計測できるようになってきました。
ガーミンウォッチと心拍計があると簡単に測定出来るようです。
ガーミンウォッチはかなり高機能なので、色々なデータが管理出来るようになっています。
以下のシリーズで、乳酸いき値の測定が出来るようです。
- fenix3 HR
- fenix5/5S/5X
- foreAthlete935
Garmin Tips: 乳酸閾値の測定の方法
まとめ
簡単にまとめると
- 乳酸は疲れるはまちがい
- 乳酸が発生するとエネルギーになる
- 乳酸は持久力につながる
- 乳酸が発生するとミトコンドリアが増える
乳酸トレーニング
- 乳酸いき値を越える強度で運動
- 短時間の運動で良い
- 高齢者でも早歩きで実践出来る
インターバル速歩
- 「ややきつい」速度から「きつい」の間で速く歩く
- 一日15分 週4日以上 15分は分割でOK
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