2020年のツール・ド・フランスにおいてイネオスのツール連続制覇は途切れてしまった。イネオスはエースのエガン・ベルナルの離脱という事前に予測されていた最悪のシナリオとなってしまった。
イネオスの最高順位はリチャル・カラパスの総合13位という結果。
だが、これまでグランツールを支配していたチームが今年も黙っているとは思えない。大胆な補強によって、タレントは揃っている。
現在、ツール・ド・フランスのロングリストには11人が選ばれている。誰が、候補となっているのか見てみよう。
ゲラント・トーマス
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チームの発表では、ツールのリーダーの一人として指名された。
2020ジロ・デ・イタリアでは、過去最高の仕上がりと自ら言っていたほど調子の良い状態だったが、ボトルを踏んで骨盤骨折してリタイヤ。
チームメイトのアシストであるテイオ・ゲイガンハートが総合優勝した瞬間はテレビを見ることが出来なかったというほど、残念な思いをしている。複雑な思いであったことは容易に想像できる。
今年にかける思いはより一層強いだろう。現在、フランスのエトワール・ド・ベセージュで順調な仕上がりを見せているゲラント・トーマス。
2021のツールでは、2回の長い個人タイムトライヤルがあり、山岳は昨年ほど厳しくない。フラットステージが多くタイム差がつくステージが少ない。
まさに、TTに強いゲラント・トーマスの為にあるようなコース設定だ。そして、忘れてはいけないのは、2018年には総合優勝し、2019年も準優勝。これも天候不順によるコース短縮があったことも大きく関係しているだろう。
ゲラント・トーマスは、狙ったレースには100%の状態に仕上げてくる。キャリアの終焉に近いトーマスも全力でツール制覇を狙うはずだ。
タデイ・ポガチャルやプリモッシュ・ログリッチとの戦いは、とてもハイレベルなものとなる。
リチャル・カラパス
Our legs hurt just watching @RichardCarapazM do efforts on this climb. 🤯pic.twitter.com/vXARi0xvyy
— CyclingTips (@cyclingtips) February 1, 2021
合計で、59.8kmの個人タイムトライヤルはカラパスにとって不利になる。だが、2019ジロ・デ・イタリアでプリモッシュ・ログリッチを追い抜いたことを忘れてはいけない。
山岳での強さは、ピカ一だろう。
2020ツール・ド・ポローニュでは登りロングスプリントを征してステージ獲得。
その後、第4ステージで落車して次のステージからDNS。
だが、2020ツール・ド・フランスではエガン・ベルナルがリタイヤしたあとに、2つのステージで2位と、山岳賞ジャージも一時獲得した。
そのコンデションの良さはブエルタでも続き、ボーナスタイムの積み重ねによってプリモッシュ・ログリッチには24秒差で負けている。これも惜しい2位だったと言える。
リチャル・カラパスには、彼をアシストする強力なメンバーがいる。これはユンボ・ヴィズマにも劣らないだろう。
テイオ・ゲイガンハート
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本当ならば、昨年ツールデビューの予定だったが、指名されたのはジロ・デ・イタリア。ゲラント・トーマスのアシストとして走っていたが、ローハン・デニスの強力過ぎるアシストで混沌としたジロを最後には制覇してしまった。
一躍、ツールでもリーダーとして指名されたが、実際にはトーマスやカラパスの走り次第となりそうな感じ。
TTでは、トーマスにかなわず、山岳ではカラパスに劣る。スーパーアシストとなってしまう可能性は高いかもしれない。それでもグランドツールを制覇した25歳としては、ツールを体験しておくことは将来的に良い経験となるはずだ。チャンスが巡ってこないとは言い切れない。
リッチー・ポート
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昨年のツール・ド・フランス総合3位。36歳となったリッチー・ポートは今年もウィランガヒルを制して順調なスタートを切っている。
6年ぶりにチームに帰ってくるリッチー・ポートは、キャリア最後を有能なアシストとして働くことになる。
リッチー・ポートにはグランツールでの自分の目標は十分に達成したと感じている。最後はチームの支えとして働くことが目標だ。
リチャル・カラパスや、テイオ・ゲイガンハートがアタックをかける時、発射台となるのはリッチー・ポートだろう。
ローレンス・デプルス
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2019年ツール・ド・フランスでは山岳ステージで抜群の働きを見せて、イネオスを苦しめた男。
2020年は股関節の問題で思ったように走れず4レースしか走っていない。
ツールでは総合23位が最高順位だが、2019年にはビンクバンクツアーも制しており、実力は十二分だ。
まず、ツールのメンバーに入るには、完全に身体が元に戻っている事を自らが証明しなくてはいけない。コロナにより、出場出来るレースは限られてくる。最高の状態を見せつける時だ。
ルーク・ロウ
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6年連続でツール・ド・フランスに出場し、フルーム、トーマス、べルナルの総合優勝を支えてきたロードキャプテン。
ロウは、現在のワールドツアーの中では最高のオールラウンド・ドメスティックと言っても過言ではないだろう。30歳のロウは、クラシックと山岳ステージのディフェンスを比較的簡単にこなすことができ、イネオスで最も経験豊富なグランツールライダーの一人だ。
トップヘビーなラインナップを考えると、ロウはどのようなツアー挑戦にも役立つだろうが、彼を際立たせているのは彼の多才さだ。
イネオスのチームリーダーについては議論の余地があるが、ツールチームの中でロウのポジションに疑問を抱く人はほとんどいないだろう。
ミハウ・クフィアトコフスキ
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2019年には慢性疲労で思うように力が発揮できなかった。
だが、2020年は完全に復活。ツールではリチャル・カラパスの山岳賞2位を助けるアシストを見せてくれた。そして、カラパスからは素敵なプレゼントを頂く。
アシストに徹している選手にステージ優勝のチャンスが訪れることは決してない。チームの戦略の転換もこれには貢献している。
2014年の世界チャンピオンは、再びその強さを取り戻したと言っても良い。ツールを走らないミハウ・クフィアトコフスキの健康な姿は考えにくい。
ダニエル・マルティネス
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今年移籍してきたダニエル・マルティネスは、すでにジロとツールのロングリストに名前を連ねている。
当面は、ジロ・デ・イタリアでエガン・ベルナルを助ける山岳アシストとなる予定だ。ツールに出場した場合には、リチャル・カラパスの発射台となることが予想される。
2020 クリテリウム・デュ・ドーフィネの勝者は、アシストとして働いた場合、間違いなく他のチームの驚異となるだろう。
ディラン・ファンバーレ
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28歳でツールは出場は5回。2019年は総合46位。
ディラン・ファンバーレは将来有望なクラシックライダーとして契約されたが、この2年間で彼は強力なオールラウンダーへと成長した。
ルーク・ロウよりもTTに強く、2019 クリテリウム・デュ・ドーフィネでもステージ勝利。優れたクライマーであるファンバーレは、今年のツールでもロングリストに名前を連ねる。だが、昨年のツールでは山岳で早々に遅れる場面が目立っていた。
フルームとは二人で合宿するほどのパートナーだったが、今年はどうだろう。
ジロ・デ・イタリアで山岳の才能を見せたローハン・デニスに変わられる可能性はあるのでは。
ジョナタン・カストロビエホ
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33歳のタイムトライヤルスペシャリスト。2015年にはツール・ド・フランス総合24位。
単にTTに強い熟練したライダーというだけではない。5回のスペイン国内TTチャンピオンであるカストロビエホは、平坦でリーダーを守り、中山間部では一貫してペースを保つことができる。
だが、今年はリッチー・ポートとローレンス・デプルスの移籍により、その地位は危なくなっていると言っても良いかもしれない。
エガン・ベルナル
背中の問題で2020ツールをリタイヤしたエガン・ベルナル。すでにジロ・デ・イタリアのリーダーとして指名されているが、ツール・ド・フランスのロングリストには名前が残っている。
現在、フランスのエトワール・ド・ベセージュでゲラント・トーマスと共に走っているが、第1ステージこそ、身を潜めていたが第3ステージでは長い逃げにのり、ミハウ・クフィアトコフスキのスプリントポイント、山岳ポイントの獲得をアシストしている。
これだけ、みると順調に治っているように見えるが、手術して戻した訳ではないので再発の可能性は多分にあると思われる。
2019年を振り返ってみると、元々ベルナルはジロに出場予定だった。鎖骨骨折したのでツールに出場となったが、コロナの影響もありどうなるかはわからないのが本当の所だろう。
まだ、正式メンバーが決まるのはツール前1週間くらいだろう。問題はローハン・デニスの名前がジロにもツールにもないことだ。デニスがどちらに出るかによってメンバーは変わってくる。
今年は誰がメンバーとなるのか、最も注目されるチームの一つであることは間違いない。
コメント
デプルスがビンクバンク勝ったのは2019年では?
ユウトさん、いつもありがとうございます! 訂正しておきました。
この年はデプルス調子良かったんですけどねえ~。完全に身体が戻ってくれば活躍出来そうですね。