レース現場でのスパイショットや噂が飛び交っていたSpecializedの新型決戦用タイヤが、ついに正式発表された。
その名もCotton TLR。 長年、数々の世界選手権やクラシックレースで勝利を量産してきた伝統のオープンチューブラー(コットンケーシング)が、現代のフックレスリムやワイドリムに対応するチューブレスレディ(TLR)として生まれ変わったのだ。
特筆すべきは、開発段階でのプロ選手たちの反応だ。2025年にSoudal Quick-Stepのレムコ・エヴェネプールがいち早く実戦に投入していた。
それだけでなく、テスト用プロトタイプを支給されたプロ選手たちが「極上の乗り心地と速さ」のあまり、メーカーへのテスト品の返却を渋ったという逸話まで飛び出している。
純粋な速さとしなやかさを極めたこのタイヤは、果たしてパリ〜ルーベのような過酷な石畳(パヴェ)にも耐えうるのだろうか?
Cotton TLR
Cotton TLRがプロ選手たちを虜にした最大の理由は、伝統的な乗り心地と現代の強靭さを両立させたハイブリッド・コットンケーシングにある。
ポリエステルコアをコットン繊維で包み込んだ「320 TPI ポリコットン・コアスパン」を採用。これにより、荒れた路面でもタイヤが驚くほどしなやかに変形し、不快な振動を吸収してくれる。
DugastやFMBといった伝統的なチューブラータイヤが長年クラシックレースを支配してきた極上のしなやかさを、最新のチューブレスシステムで見事に再現しているのだ。
テストを終えたプロ選手たちが「もう他のタイヤには戻れない」とプロトタイプを手放したがらなかったというエピソードも、この320 TPIがもたらす魔法のような接地感によるものだろう。
TPIとは
「Thread Per Inch(スレッド パー インチ)」の略で、ケーシングの1インチ(2.54cm)あたりの繊維の総数を表している。
柔軟性が高く、しなやか。グリップ力が上がる。転がり抵抗は低くなるが耐久性は低くなる。
繊維が太く、剛性が高い。タイヤの変形が少ない。
レムコの爆発的なアタックを支えるGripton T2/T5デュアルコンパウンド
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トレッド面には、同社のハイエンドタイヤ「Rapid Air」などにも採用されているGripton T2/T5デュアルコンパウンドが使用されている。
- センター(T2): 転がり抵抗を極限まで削減し、直線での圧倒的なスピードを実現
- ショルダー(T5): コーナリング時の確実なグリップ力と安心感を担保
レムコ・エヴェネプールのような、他を圧倒するスピードで独走に持ち込む選手の足元を支えるにふさわしい、最新のゴム化学によって作られた「現代のレーシングタイヤ」に仕上がっている。
ラインナップと公称重量は、決戦用として非常に競争力がある数字だ。
- 700×28c: 280g
- 700×30c: 290g
- 700×32c: 320g
海外メディアのテストによると、30cモデルの実測重量は279gと非常に優秀。
しかし、フィッティングにおいて一つ注意点がある。内部リム幅21mm / 外部リム幅35mmのRoval Rapide CLX IIIに装着した際、30cモデルの実測幅は27.80mmと、表記よりもかなり細身に出る傾向があるようだ。
フレームとのクリアランスを極限まで攻める場合や、運用初期は少し注意が必要かもしれない。
石畳(パヴェ)を走り切れる耐久性はあるのか?
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このタイヤは、耐久性を重視した「Mondo」シリーズのようなエンデュランスタイヤではなく、あくまでスピードとフィーリングを最優先したピュアレーシングモデルだ。
スペシャライズドはビードの密着性や破裂耐性を高めたと主張しているが、北の地獄で、どれだけパンクに耐えられるかは未知数な部分もある。
しかし、32cなどの広いタイヤ幅と低い空気圧の組み合わせにより、石畳を力でねじ伏せるのではなく浮遊するように走れるメリットは計り知れない。
春のクラシック戦線で、レムコをはじめとするSpecializedサポートチームがこのCotton TLRをどう運用してくるのか。機材ファンとしては、選手の足元から目が離せないシーズンとなりそうだ。


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