チームスカイは環境問題に対するアピールを続けてきたチームだった。
これが、一転してチームイネオスになると、環境問題の敵となるとはどういうことなんだろう。
ツール・ド・ヨークシャーでは反対する人々のデモがあった。プラカードを掲げて抗議してるだけでしたが、当初言われていた何千人という規模のものではなく、数十人程度だったようだ。
なぜ、イネオスが環境問題で取り上げられるのか、その問題点を見てみよう。
INEOSのフラッキング問題
INEOSは、事業買収を繰り返して巨大な企業になった。
その事業内容は塗料からプラスチック、織物から技術、医薬品から携帯電話に至るまで、多種多様な商品の製造に欠かせない原材料を製造しており、幅広い事業を展開する石油化学企業だ。
その中の一つの事業に、シェールガスの採掘も含まれている。
これまでは、通常の技術では入手できなかった岩盤層(シェール)から、膨大な量の天然ガスが採掘できるようになった。
深さ2000メートルから3000メートルの坑井を掘り、そこから水平方向に2000メートルから3000メートルの坑井を掘ることで、従来の原油とは違う場所に閉じ込められているガスやオイルを採掘する。
坑井(こうせい)とは
採掘した鉱石を重力を利用して自然落下で運搬するために,母岩あるいは鉱体中に設けられる小竪坑をいう。
ひとつの坑井をフラッキングするには9000-2万9000tの水が必要となる。ひとつのプラットフォームを形成するのに6つの坑井が必要となり、その為に5万4000-17万4000tの水が必要とされる。
坑井を掘って行く過程で注入する化学物質には、酸・防腐剤・ゲル化剤・摩擦低減剤などを添加した水が使われており、これを
- フラクチャリング流体(fracturing fluid)
- フラッキング水(fracking water)
と呼んでいる。
地域の自治体にも化学物質の内容は知らさせていない。有害な物も多くあり、これを坑井に放置、地下水に漏れ出すなどの問題がある。
この手法は、環境と健康に対して深刻な影響を与える。一つの坑井は翌年には、採掘量が半減するといわれておりコストもかかり、長期的な経済利益も、おおむね現実的ではないと言われている。
このフラッキングによって、イネオスは多くの環境団体から訴えられている状況となっているのです。
チームスカイが掲げていたキャンペーン
フラッキングによって得られるシェールガスはエネルギー源であり、プラスチックの原料であるエチレンの原料でもあります。
INEOSは、プラスチック分野では、欧州で3番目に大きなポリエチレンとポリプロピレンの製造会社であり、包装と建築に広く使用されている2つの最も一般的なプラスチック化合物を製造している。
チームスカイでは世界のプラスチック汚染への取り組みを支援するためのキャンペーンであるSky’s Ocean Rescueを支援していた。2018年ツール・ド・フランスではジャージの背後にオルカクジラを描いて走っている。
クジラはプランクトンを食べるために海水をがぶ飲みするので、海に浮かぶプラスチックも一緒に飲んでしまいますよね。海洋生物を守るためのキャンペーンをしていた訳。
そして、こんなボトルも発売されてた。
チームスカイは、2020年までにすべての使い捨てプラスチック包装を事業から排除することを約束していた。
今でもSky’s Ocean Rescueのサイトには名前が残っています。
フルームはインタビューで回答
私は会社として、彼らは環境問題の多くに取り組むために多くのことを行っていることを理解しています。チームがその哲学を変えていないという点でDave(チームのGM)はそれを説明したと思います。
私たちが使用するプラスチック、特にシングルユースのプラスチックの量を減らすために、チームがサイクリングし、可能な限り努力すること。そのキャンペーンは将来的に成長することになるでしょう。
公害、地球温暖化、そして環境に関しては、世界が危険にさらされているのかどうかを判断するのに十分にはわからない。自転車は変化の要因となる可能性がある。
フルームは選手を代表してインタビューに答えていますが、弱い立場ですよね。
これまでも、プロチームのスポンサー問題はあった。
- 鉱山会社のOricaがMitchelton-Scottの元スポンサー
- 石油大手のTotalがDirect Energieのスポンサー
- バーレーン – メリダに対する人権団体からの苦情
特に、Direct EnergieのスポンサーとなったTotalなどはINEOSと同じエネルギー会社。こちらでは全く抗議行動などもおこってない。
UCIは、レースライセンスを発行する際には倫理基準を考慮に入れている。
しかし、これは法的および契約上の義務に限定されており、「サイクリングのイメージ」という曖昧な用語を尊重する以外のことはカバーしていない。
環境にやさしい交通手段を推進しているにもかかわらず、世界中のあらゆるレースでライダーが何十台も走っているプロサイクリングは、「環境に優しい」スポーツであると合理的に主張することはできない。
環境に良くない企業がこのスポーツを批判的なものにしているというクレームは、少し見当違いかもしれない。 同様に、Ineosのプラスチック製造に対する苦情は、私たちの日常生活におけるそれらの製品の拡散によってより複雑になっている。
今後もイネオスのレースでは抗議活動などが、おこる可能性はある。ただ、レースを中断するようなストやデモはしないで欲しい。走っている選手には可哀そうなことであり、政治の問題をスポーツに持ち込むのはどうなのかとも思う。
この問題は難しいものがある。
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