ロードバイクの情報を発信しています!

北京五輪10,000mスケート金メダリストは2年間スケートレースに出ず週30時間の自転車トレーニングで勝利

トレーニング
Photo by Vidar Nordli-Mathisen on Unsplash
この記事は約10分で読めます。

北京オリンビックスピードスケートで10,000mと5,000mで金メダルを獲得したニルス・ファンデルボール(Nils van der Poel)。

10,000mでは世界新記録で優勝するという快挙。だが、ニルス・ファンデルポールは、2022年北京冬季オリンピックの1万メートルのスタートラインに立ったとき、すでに勝ったことをイメージしていたという。

結果、世界記録を樹立したファンデルポールは、自分がどのように勝利を収めたかを皆に伝えた。

「How to skate a 10k… and also a half 10k」と呼ばれるガイドの中で、ファンデルポールは2019年5月から2022年2月までのトレーニングについて詳しく説明。

この文書の中で、すべてをさらけ出している。日ごとのトレーニングカレンダーを記載しただけでなく、臨床研究としての日記ともいうべき個人的な物語を書き記したのだ。

エリートレベルのサイクリストとスピードスケーターが、しばしば1シーズンだけスポーツを交換することは結構ある。

1980年のレイクプラシッド冬季オリンピックで5つの金メダルを獲得し、その後セブンイレブン自転車競技チームを共同設立してジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスを走ったエリック・ハイデンという名前を聞いたことがあるかもしれませんね。

日本では橋本聖子選手が1996アトランタオリンピックに自転車で出場している。

ニルス・ファンデルポールのトレーニングで不可解なのは、彼がスピードスケーターだったとは想像もつかないことだ。

このトレーニングプロファイルからすると、彼はスキー、ランニング、ウェイトリフティングに加えて、98%の時間自転車に乗っていることになる。

スピードスケートはほとんど後回しにされているが、最終的にそれは彼の焦点であることに変わりはない。

それでは、自転車選手、つまりオリンピックスピードスケート選手のトレーニングプランについて詳しく見ていこう。

 

スポンサーリンク

ニルス・ファンデルポールとは?

 

ファンデルボールは、才能に恵まれ、かつ献身的な人物である。

彼が自分のトレーニング方法を説明するときのさりげない態度は、注目に値するものばかりだ。

ファンデルボールは、2019年5月にスウェーデン軍を退役した後、「ジムで125kgのスクワットこなし、10kmを40分で走れた」と語っている。

スピードスケートに特化したトレーニングに移行する頃には、非常に強力なフィットネスベースでスタートしていたのだ。

 

ファンデルポールが週30時間ライドする理由

 

ファンデルボールのトレーニングの大原則は、何よりも先に強力な有酸素運動のベースを開発すること。

これによって彼は「これまで以上に高強度の作業を行う」ことができ、そのために2019年5月から2020年8月までスピードスケートに出場することもなかった。

冬季オリンピックまで2年を切った時、ファンデルボールは1日4~7時間、自転車に乗っていた。

その理由は、ファンデルボールが10kmのスピードスケートのパフォーマンスを、2つの要素の結果として捉えているからだ。

  1. 競技速度能力
  2. 有酸素能力

の二つだ。

 

つまり、速く走る能力、そして長く走って回復する能力だ。これが500mや1,000mの選手だったら、違っていただろう。

日本の選手のようにコーナリングとか体幹トレーニングを主にしていたとこだろう。

ファンデルボールは有酸素能力を高めるため、スピードスケートのシーズンが終わるとすぐに(2月頃)有酸素トレーニングを開始し、7月末まで続けた。

ファンデルボールにオフシーズンはなかったが、毎週、2日連続で休養日を取っていた。

 

photo nils.vanderpoel instaramより

 

ファンデルボールは、5日間連続で長時間ハードなトレーニングを行い、その後2日間は完全に休息するという、独自の「5-2トレーニング」を実践している。

その最大の理由は、ファンデルボールが普通の生活を送りたかったからだ。

週末には友人と出かけて、ビールを飲みたい。持久系スポーツと「限界利益」の世界では、毎週2日間休むオリンピック・チャンピオンは、何かと話題になっている。

この充実した休養が、エアロビックシーズンに7時間のサイクリングを行う月曜日のトレーニングへのモチベーションを維持するのに役立った。

各トレーニング期間中、ファンデルボールは、サイクリング、クロカンスキー、ランニング、スキー登山など、さまざまな運動を行った。

時折、スピードスケートのセッションも。

 

エアロビックシーズン

photo nils.vanderpoel instaramより

 

エアロビック・シーズンでは、ファンデルボールは5日間で33時間/週のサイクリングを目標に掲げた。

7時間のサイクリングを3回、6時間のサイクリングを2回行い、可能な限りランニングやクロカンスキーで代用した。

精神的な負担を軽減するために、ファンデルボールは朝食前に走り、長い昼食をとり、キャンディーを食べて燃料を補給することもあった。

また、600kmのサイクリングや、5日間で280kmを走るステージレースなど、耐久レースにも挑戦し、モチベーションを高めていった。カジュアルに。

 

すべての優れたトレーニングプランと同様に、ファンデルボールはトレーニング量と強度の両方で漸進的過負荷の原則に従っている。

彼は、週に30時間以上の有酸素トレーニングを行い、有酸素性閾値の200w(2.4w/kg)から始めた。

エアロビックシーズンの終わりには、250w(3w/kg)を6~7時間かけて追い込んでいた。

ちなみに、ファンデルボールは、10月に85kg、1月には80kgまで減量している。残りの期間は、体力と体重のバランスをとるために82~83kgをキープ。

5日間の膨大なトレーニングブロックの間、エネルギーレベルを維持するために、ファンデルボールは1日あたり約7,000kcalを食べ、時には “セッション中にホイップクリームを飲む “こともあったそうだ。

 

photo nils.vanderpoel instaramより

 

また、ファンデルボールは、木曜日から日曜日まで友人と旅行に行きたい場合、30時間のトレーニングを月曜日から水曜日に合わせる。

つまり、その場合には1日10時間乗ったと付け加えている。av30km/hとすると3日で900km!

ファンデルボールのエアロビックシーズンは、毎日(月曜から金曜まで)6〜7時間、250〜260Wのサイクリングで構成されていたため、あまりバラエティに富んでいない。

単純なことだ。

ファンデルボールは「エアロビック・シーズン」を経て、「スレッショルド・シーズン」、「スペシフィック・シーズン」、そして「エアロビック・シーズン2.0」に移行する。

 

スレッショルド・シーズン

photo nils.vanderpoel instaramより

 

8月初旬から10週間にわたって行われたファンデルボールの「閾値シーズン」は、最もひどいバイク・ワークアウトで構成されていた。

彼はトレーニング量を週25時間に減らし、できるだけ多くの時間を閾値努力でこなそうとした。週に数回、6×8分の閾値セッションから始まるが、すぐに4×30分、6×15分と進んだ。

 

この閾値セッションは週に1回や2回ではなく、ファンデルボールの閾値シーズン中は毎週、月曜日から金曜日までの5日間連続して行われる。

ファンデルボールの「閾値」とは何か、疑問に思うかもしれない。390〜420w(4.7w/kg〜5.1w/kg)くらいだ。

200wで5分、260wで6分、405wで5×20分(4分休憩)、220wで3時間。完全に自転車選手だ。

 

ワークアウトと全体の状況から推測すると、ファンデルボールの「しきい値」作業はFTPのすぐ下で行われていると考えられる。

通常、平均的なサイクリストがFTPでこれだけの時間をこなすのは不可能だろう。しかし、オリンピック・チャンピオンである彼なら可能だ。

ファンデルボールは、ウォームアップと休息が非常に短いのが特徴。

多くのサイクリングコーチは、長い(15分以上)インターバルの間に長い休息をとるよう指示するが、ファンデルボールは休息時間を可能な限り短くしている。

9ヶ月以上にわたる自転車での有酸素運動と閾値トレーニングの後、ファンデルボールはついにスピードスケートの準備が整った。

スペシフィックシーズンと「エアロビックシーズン2.0」は、主にスピードスケートのセッションと、210w(2.5w/kg)で2~3時間の簡単なサイクリングのセッションで構成されている。

 

「スペシフィックシーズン」と「エアロビックシーズン2.0」

 

スピードスケートのトレーニングの前に、ファンデルポールはスケートのスピードスーツを着てバイクトレーナーでウォームアップをする。

リンクは他の競技者が使用しているため、傍観するしかない。氷に触れる前にウォームアップができるバイクトレーナーは、まさに完璧なソリューションだ。

これは多くのスケート選手がしているウォームアップでもある。

ファンデルボールは、トレーニングでも競技と同じようにバイクのウォームアップを行っている。

200wで5分、260wで6分、400wで3×30秒、30秒休憩、400wで2分、そしてセッションやレースのスタート8分前に氷上に駆け上がる。

 

「特定シーズン」には、競技シーズンの始まりも含まれ、数週間しかない。

シーズン最大のレース(冬季オリンピック)に向けてピークを迎えるため、ファンデルボールは12月のワールドカップ第1ブロック終了後、厳しい有酸素トレーニングに戻した。

ファンデルボールによると、この「楽」な期間によって、トレーニングのフィットネスとピークフォームの健全なバランスを保つことができ、競技シーズンが終わった後のオフシーズンをスキップできる理由になっているという。

 

「エアロビック・シーズン2.0」では、ファンデルボールは月曜日から木曜日まで210w(2.5w/kg)で6時間、金曜日に10kmのスケートを1回だけ行い、その後210wで3時間バイクに乗っている。

週末はどうするのか? もちろん、休息だ。

 

重要なポイント

 

ニルス・ファンデルボールは、その身体能力だけでなく、このような体系的かつ大量のトレーニングプログラムに対する献身的な努力と精神的な強さにおいて、本当に驚くべきアスリートだ。

このスウェーデン人の有酸素トレーニングは、他のプロサイクリストよりも長く、閾値トレーニングは他とは一線を画している。

彼の5/2トレーニングスケジュールは非常に興味深いもので、普通の人間のようになりたいという彼の願望がうかがえる。

ファンデルボール自身は、このトレーニングプログラムに挑戦することを読者に警告している。

その代わり、ゆっくり始めて、一度に一歩ずつトレーニングを増やしていくようにと念を押している。

ファンデルボールはここまで来るのに、つまり週に30時間以上トレーニングするまでに何年もかかっており、これは遊びで試せるようなトレーニングプログラムではない。

 

ファンデルボールは休息の重要性を知っており、記事の中で何度も「限界」に言及しているが、これはおそらくオーバートレーニングの感覚を指していると思われる。

賢く、ハードに、そして楽しく。ファンデルボールもきっとそう思っているはずだ。

 

ファンデルボールの日記では、面白さと同時にインパクトのある言葉が書かれている。

私のトレーニングプログラムの最大の課題は、「やりたい」と思い続けられるかどうかだった。

モチベーションが鍵でした。モチベーションを維持できるものがあれば、それは良いものだと考えていた。時にはビール1本、あるいは8本のビールが必要だった。

 

以下の参考文献は62ページもあり、全てが書かれている。自転車に乗れない季節にはランニングを多用していることもわかる。ただ、休養もしっかりと取られている。

How to skate a 10k… and also a half 10k

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました