プロの世界ではハンドル幅の狭いものを使うライダーが増えている。ハンドルがフレアになっているライダーのなんと多いことか。
逃げているライダーの中には、狭いハンドルに投影面積が小さくなったボジションで乗っていることが多い。
多くのプロとアマチュアのレーサーは、ブレーキフードを内側に回転させて、より狭く、より空力的なポジションを実現するようになった。
幅の狭いハンドルで乗るライダー
今年の初めに、Ribble-Weldtiteライダーのエアロ愛好家のダン・ビンガム(Dan Bigham)は、フード間がわずか27cmのハンドルで逃げて見せた。
Despite the efforts of @DanBiggles22, who tried going solo inside the final 10 kilometres, all our breakaway riders have been caught with two kilometres to go!
A sprint finish is on the cards in Warrington!
[📸 –> @swpixtweets]#TourOfBritain 🔴🔵⚪ pic.twitter.com/poABQ5i0TI
— AJ Bell Tour of Britain 🇬🇧 (@TourofBritain) September 9, 2021
ダン・ビンガムは、アマチュアライダーながら世界選手権TT16位。英国のアワーレコード、世界第2位のブラットリー・ウィギンズの記録も破ってみせた。
ダン・ビンガムは、Team Jumbo-Visma、Canyon-SRAM、デンマークトラックサイクリングチームなどの、チーム空力コンサルトの仕事もしている。
また、Wattshop機器会社のアドバイザーとしても活躍中だ。
そして、トラック競技でも活躍する、BEAT Cyclingのヤン・ウィレム・ファン・チップも非常に狭い幅のハンドルでレースを沸かしてくれる。
ただ、この製品化されていたSpeeco Aero Breakaway BarはUCIによって禁止となってしまう。
プロでは、ヴィクトール・カンペナールツ、レムコ・エヴェネプールなど逃げのスペシャリストや、ロマン・バルデなどもブレーキレバーを内側に傾けてハンドル幅を狭くしてエアロ効果を得ている。
何故狭いハンドルバーを使うのか
バイクポジションはさておき、狭いハンドルバーを使用する第一の理由は空気抵抗を下げることだ。
ライダーとバイクのシステムにおいて、空気抵抗の最大の要因は体であり、体の空力特性、特にリーディングエッジを改善することで、簡単に利益を得ることができる。
幅の狭いハンドルバーに変更することで得られる利益(正確にはパワーの節約)は、30km/hで10mm狭くなるごとに0.5w、45km/hで10mmごとに2wとなる。
例えば、42cmのハンドルバーから38cmのハンドルバーに交換すると、時速45kmで約7~8ワットの節約となる。これは、タイムトライアルバイクで80mmのリアホイールからディスクホイールに交換するのとほぼ同じ効果だ。
これは、近年のタイムトライアルを見たことのある人には明らかだろう。タイムトライアルバイクはフロントエンドが大幅に狭くなっており、トップライダーはアームレストを調整して前腕を物理的にできるだけ近づけるようにしている。
2020年の東京オリンピックで、世界最高のトラックサイクリストの多くが極端に細いハンドルバーを使っていたのもそのためだ。
低速域でのワット数の削減は、あまり効果的ではない。空気抵抗を克服するために必要なパワーは速度の3乗に比例するため、低速で節約できるワット数は少ない。
つまり、同じコースであれば、速いライダーよりも遅いライダーの方が、空力的な改善による時間短縮効果は大きいと言える。
節約できるワット数の絶対値が小さくても、遅いライダーはコース上にいる時間が長いので、同じ割合で空気抵抗を減らしても、時間的に得るものが大きい。
狭いハンドルの節約ワット数は?
時速55km/hの場合の、ハンドル幅380mm、330mm、280mmを比べた場合だけど、280mmとなるとかなりCda(空気抵抗係数)は抑えられている。
ただ、55km/hで走れる人はそんなにいない。下り坂くらいのものでは。
時速45km/hならば、巡行できるトップライダーは多くなる。この場合でもハンドル幅が狭いほうが節約できるのはデータでも現れている。
ただ、現実問題として280mmのハンドルで走ろうと思う人はいないだろう。実際に市販されているのを見たことがないし~。
せいぜい、アルピナカーボンスプリントトラックハンドルバーの33cm幅くらいだろうか。
もしくは、Worx track handlebar。ブレーキフードで26cm(中心から中心)、ドロップで33cm。
狭いハンドルのデメリットは
Worx track handlebarの、前から見た感じも凄く狭い。ただ、こんなハンドルでちゃんと走れるのだろうか?
一般的なライディングでは、フードの26cmは狭すぎるだろう。たとえば、リラックスした直立姿勢のために上部にスペースがなく、非常にアグレッシブなライディングポジションになる。
ただ、あまりに狭いとハンドリングが難しくなるのは容易に想像できる。長く距離を乗る場合や、初心者がいきなり狭いハンドルで走っていたらずっこけてしまうだろう。
幅の広いハンドルバーは、幅の狭いハンドルバーよりも回転に必要な物理的労力が少なくなる。
42cmのハンドルバーと26cmのハンドルバーを比較すると、回転円は「約20%減少」している。つまり、同じトルクを適用するために20%増加する必要があるということだ。
ステムの長さまたはハンドルバーのリーチを長くすることで、回転円のサイズを大きくして補正することにより少しは改善される。
プロライダーがレースで使う場合には、快適性なんて考えていない。ある程度、乗り込んでいけば問題は少なくなるかもしれないが、最初から使うのはお勧めしないということだ。
更に、ハンドル幅が狭いと一般ライダーで必要な、ライトやベルなど設置するスペースが取れないことも考えられる。
メリットとデメリットは良く考えて使わないといけない。
狭いハンドルには何がある?
UltraAeroハンドルバーはハンドル幅は33cmだけど、間違いなく高いし統合されているのでステム長などを考慮しないといけない。
Shimano PRO Vibe Aero Alloy Pursuitハンドルバーは幅36cmだ。フレアドロップを提供し、上部に12度のスイープがある。
これはアルミなので重量が330gと少し重いが価格は1万円台だ。
PLT エルゴ カーボンハンドルも36cm幅がある。こちらならば、195gからとなる。ただ、価格はアルミの倍以上となる。
アマゾンでは400mmサイズしか見当たらない。
Race Attack GF Aeroも36cm幅だ。40.5cmのドロップで36cmのフード間隔。アルミニウム6061 T6で、価格は19.95 €(約2,500円)と安価だ。お試しには良いかも。
36cm幅くらいならば、長距離でもあまり疲れることなく走れて、装着するだけで少しだけ速く走れる可能性は高い。
36cmよりも、狭いハンドルバーはほとんど販売されていないので、簡単に試してみることは出来ないけれど、体感してみたい。
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