クリテリウム・デュ・ドーフィネで発見された新型のトレックマドン。
発売日は6月30日。つまりツールの開幕戦の一日前だ。プレゼンテーションでお披露目ですかね。
新型マドンの特徴は、フレームにあいた穴。これは空力的に有効に働くのだろうか?
Iso Flow
時速40kmで走る時、抵抗は全体の約90%を占める。
そのためメーカーは、少しでも有利になるように研究開発を続けている。
もちろん、過去にはかなり過激な解決策も見られた。例えば、Ribbleはライダーの周りの空気の流れを整えるためと称して、がっしりしたハンドルバーを採用している。
ハンドル幅は33cmと狭いが重量はかなりある。
他のブランドは、シートステーをどんどん低くし、UCIの規則が少し緩和されてからは、BMC Timemachineのようにボトムブラケット部分がよりがっしりしたものも見られるようになった。
フレームのTTバイク化も各ブランドで見られる。
空気抵抗削減とIsoSpeedを兼ねる
しかし、シートチューブとトップチューブの接合部にこのような、大きな穴があるのは間違いなく初めてのこと。
内側のエッチングは、トレックが「IsoFlow」と呼ぶと言われている。
IsoFlowの名称は、快適性とエアロダイナミクスの両方を示唆しており、「IsoSpeed」の後継であるのは間違いないだろう。
空力の基本は、大きく分けて3つのカテゴリーに分けられる。
前面投影面積と後流によって発生する。
衣服や剃り上げたばかりの脚などの表面から発生する抵抗のこと。
マッハのスピードで走る訳ではないので、通常のライダーのスピードでは、この抵抗は無視できる。
この中で最も大きいのは、圧力抵抗で、前面積と後流の両方に影響される。前面積が主な原因と思われるが、それはある程度事実であり、後流を大きくしているからにほかならない。
走行中、空気の流れは車体やバイクの周囲で分離し、ライダーの後方に乱れた後流と低圧の渦を形成する。
これが、少なくとも空気力学的な意味で、ライダーの速度を最も低下させるものだ。
CFD(数値流体力学)ソフトウェアを使うと、この淀んだ空気の大きな「プール」がライダーの真後ろにあることがわかる。
これはトレックが改造しているIsoFlow(穴)のすぐ近くだ。
通常、脚の動きによって、シートポスト周辺の空気は大きく乱れる。この乱流の多くが脚の周辺に流れ出し、重要な航跡を増大させるのだ。
風は後ろに流れていくが、IsoFlow(穴)の部分に大きな風の流れがあることがわかる。トレックが目指したのは、この部分の風の通りを良くしようということだ。
理論的には的を得ているように思える。
更に、シートポストの分断により、IsoSpeedの効果を作り出し、フレームの重量削減も果たしているだろう。
IsoFlowが実際に効果があるかどうかは、残念ながらわからない。
科学的には有望だが、トレックの大規模な計算能力をもってしても、CFDは常に100%正確とは限らないからだ。
ただ。ライダーとバイクを一体化して考えるメーカーが増えてきたことは、更なる発展を期待させる。
結局のところ、バイクは誰かが乗らなければ機能しないからだ。
シートチューブは、今後も開発される分野であり、ホープのトラックバイクは、おそらく時代を先取りして、この分野に焦点を当てていたことがわかる。
今後、各ブランドが最後の1ワットまで絞り出そうとする中で、シートステーやシートチューブのファンキーな仕掛けがたくさん見られるようになれば面白い。
6月30日の発売でトレックがどのような売り文句でアピールしてくるのか楽しみにしておきたい。風洞実験や、実際にライダーが乗った状態での削減がどれくらいなのか知りたいところだ。
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