ランニングは万能ではないが、運動はメンタルヘルスにある程度の影響を与える。
身体活動がうつ病の症状を軽減することは研究によって示されているが、その量はこれまで定量化されていなかった。
4月にJAMA Psychology誌に掲載された分析では、推奨運動量の半分の運動をするだけでも、全く運動しない人と比べて、うつ病のリスクが18%低下することがわかっている。
推奨量の運動(週2.5時間の早歩き)をした成人のリスクは25%低下した。
短い運動でも
今回の解析では、参加者が3,000人以上、追跡期間が3年以上の研究のみを対象としている。
また、医師によるうつ病の診断、あるいは問診でうつ病であることが示された、合計20,000人近くの参加者を対象としている。参加者の64%が女性だった。
これまでにも、座っていることが多い人に比べて、体をたくさん動かしている人はうつ病のリスクが低いことが発表されていたが、今回の研究により、特に運動などの介入がより身近になったと言える。
世界保健機関(WHO)によると、全世界で2億8000万人(全成人の約5%)がうつ病に罹患していると言われている。
しかし、うつ病は一般的な病気であるにもかかわらず、病気に対する偏見があり、治療を受けることができない場合も多い。
一見、華やかに見える芸能界でも突然自殺をしてしまう現代だ。いかに、悩みを抱えている人が多いのか、実際には本人にしかわからない部分も多い。
「したがって、今回の研究は、生活習慣を推奨する医療従事者、特に、現在の推奨目標が非現実的だと感じている運動不足の人々にとって重要な意味を持つことになる。」と、研究の著者は書いている。
短時間のウォーキングでも、悩んでいる人に何らかの救いを与えることができるかもしれない。
運動が脳を変化させる
なぜ、運動は私たちのメンタルヘルスの向上に影響を与えることができるのだろうか。その答えは完全にはわかっていないが、いくつかの可能性がある。
ひとつは、運動が私たちの脳を変化させるということだ。
ストレスの多い日にランニングをすると、(おそらくセロトニンの放出によって)短期的に効果があることは誰もが知っていることだ。
だが、研究によると、運動は長期的なうつ病の緩和にも役立つことが分かっている。
これは、運動によって、ニューロンの成長をサポートするタンパク質である脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現が増加するためと思われる。
運動はまた、気分を整える方法として知られている睡眠を改善し、自尊心を高め、グループやクラブを通じて積極的な社会的交流の扉を開くことができる。
その運動を屋外の自然な緑地のある場所で行えば、その効果は倍増する。
私たちの感情と行動には相互関係がある。
例えば、悲しいから、怒っているから、ある行動をとるかもしれない。しかし、行動や言動は感情を変化させることができる。
例えば、「走りに行こう!」と思っても、待てど暮らせどやってこないかもしれない。
でも、とりあえず行ってみると、その後、やる気が出てくるかもしれない。達成感や向上心で、気分も高まる。
しかし、本当にやりたくないことを無理にやるのは、言うは易く行うは難しい。落ち込んでいる時に、運動をしようと思っても中々出来ないのも現実だ。
2017年に『General Hospital Psychiatry』誌に発表されたある研究によると、参加者の大半は身体活動と心の健康に関連性があることを知っており、もっと活動的になりたいという願望を持っていたそうだ。
しかし、その能力を制限する気分が大きな障壁として挙げられていた。それもわかる気がする。
少しだけ動いてみる
まずは、自分が本当に楽しいと思えることを選 ぶことから始めてみよう。
近所の公園を何周か走る、ランチやコーヒーを買いに歩く、過去に楽しかったフィットネスクラスに参加するなど、何でもかまわない。
また、運動不足を解消するための工夫をするのも効果的。
- 翌日の運動量を確保するために早寝早起きをする
- 渋滞を避けるために自宅からランニングを始める
- 会議やその他の用事で1日が埋まってしまわないように散歩の時間をカレンダーに書き込んでおく
- とにかく歩いてみる
ほんの少しの工夫から初めていみるのが良いかもしれない。
セラピストに相談することで、やる気を起こさせるヒントを見つけたり、うつ病の他の実績ある治療法を検討したりすることもできる。
ほんの少しの運動でも、効果はあるので試してみる価値はあるはずだ。
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