ジロ・デ・イタリア第11ステージは、後半に4か所の未舗装のグラベルロードがあり、ここで大きく明暗をわけた。
エガン・ベルナルは自ら先頭に立ち、ペースを上げる場面もしばしば見られたが、レムコ・エヴェネプールは見事に遅れてしまった。
そして、もう一人の優勝候補であるサイモン・イェーツは被害を最小限にとどめている。彼らの走りは、対照的な結果となった。これの要因とはなんだろうか?
エガン・ベルナルがグラベルを得意な訳
この投稿をInstagramで見る
皆さんは、思わなかっただろうか?
小柄なベルナルが、フィリッポ・ガンナの爆走に遅れることなくついていく姿に何故、これほど速く走れるのかと。
第3セクターで、レムコ・エヴェネプールが2度目の遅れを取った時には、先頭でベースを上げまくった。
エガン・ベルナルは、ストラーデビアンケでも3位に入っている。これが出来た理由は彼のバイクの歴史にある。
この投稿をInstagramで見る
ベルナルは、7歳で古い自転車を買って貰い、9歳で初めてMTBのレースに出て優勝。地元のコロンビアのシバキラは標高が高く(2600m)、練習場所には困らなかった。
2013年にクリス・フルームのツール・ド・フランス優勝をみてロードにも興味が湧く。それは、ナイロ・キンタナのジロ優勝で更に興味が強くなる。
だが、高校を卒業して大学に進みジャーナリストの道を目指そうと考えていて自転車は辞めようと思っていたと言う。
MTB選手では頑張っても生計が立てられないからだ。大学の成績は良く、勉強に専念しようとしたが、家族や周りから止められ1年だけ自転車選手として頑張ること。
そして、2015年にはコロンビア代表としてアンゴラのMTB世界選手権で2位となっている。これが自転車の道に進むことを決意したレースとなる。
当時のMTBコロンビア代表監督だったアンドレア・アルベラーティに相談すると、アンドラの世界選手権の後で地元のシチリアに招いてくれた。
イタリアでは、MTBレースから出場し、ロードレースにも出場。その後、トロフェオ・ダウトゥンノ・デル・モンテ・ピサーノで優勝。この大会はイタリアのリトルフランドルとも呼ばれる厳しいコース。
そこで目をつけられて、2016年にAndroni Giocattoli – Sidermecに入っている。
つまり、エガン・ベルナルはMTB出身であり、小さな頃からグラベルロードばかりで走っていたのでストラーデビアンケでも難なく走れたということだ。
これは大きな強みだろう。ベルナルは、ゴール後に「何故、誰もいなくなったのかわからない」と言っているが、それはあなたがグラベルロードに強いからに他ならない。
レムコは未経験
この投稿をInstagramで見る
レムコの場合には、これまで10日以上の長いステージレースに出場したことがない。まして、昨年のイル・ロンバルディアの落車から調整レースも走っていなかった。
ベルギー出身なので、石畳はけっして不得意ではない。だが、今回のようなグラベルロードでのレース経験はないだろう。
Deceuninck-Quick-Stepの1年目では、あえて厳しいフランドルのレースには、出して貰えていない。ジュニアから上がってきたばかりで、まずは順序立ててレベルを築いていくためだ。
クラシックに初めて出たのが、昨年のイル・ロンバルディア。だが、ここでキャリアを脅かすケガをしてしまう。
8か月振りのレースが、ジロ・デ・イタリアなのだから、疲れが出ても仕方がない。
ゴールでは、ベルナルに対して2分8秒遅れた。これで済んだのは前からアルメイダが降りてきてくれたからだ。総合では2分22秒遅れてしまったが、この先で挽回できるチャンスもあるかもしれない。
とにかく山岳で遅れないことだ。
最後の個人TTでは、上位に位置しているライダーを何人か抜くだろう。そこまでに出来るだけタイム損失を押さえておきたい。
追記
2019アドリアティカイオニカレース第1ステージでグラベルロードを走っているが、このステージでは50位の1分28秒遅れでゴールしている。
ジロでも遅れることは想定されていた。
数年前にレムコはサッカー選手だったが、ベルナルはグラベルでレースしている。リハビリ期間中に、ステアリングスキルの練習をする予定だったが、時間がなかった。
本当ならば、この冬にシクロクロスを練習する予定だったが、これもリハビリのためになくなっている。腰が悪い状態ではシクロなんて出来ないですもんね。
また、この日は休息日明けでレムコの調子も良くなかったことも原因の一つとしてあげられている。
サイモン・イェーツの場合
この投稿をInstagramで見る
サイモン・イェーツは、ベルナルから26秒遅れの15位でゴールしている。これで総合順位は、9位から5位にジャンプアップ。
普段、オフロードに乗らないサイモン・イェーツが大きく遅れなかった要因は、今年の初めにストラーデビアンケを走っているからだ。
ここでは、63位でゴールしているが、この経験が大きく役にたっている。
ゴール後のインタビューで
それは私の好きな地形ではない。今年、ストラーデビアンケ以外でオフロードに乗った経験はない。
それは経験のためだけに行うのに非常に貴重だったと思う。今日はとても役に立った。レース前に偵察をするのと同じように。本当にそれを乗り越えてうれしい。
人間誰だって、初めて経験しては上手くいかないものだ。レムコも1度でもグラベルロードのレースを経験していれば、違った結果となっていただろう。
サイモン・イェーツの場合、2018年にトップを快走しながら最終的にクリス・フルームに30分以上遅れてジロを終えている。
全て全力で走るのではなく、狙うべきステージできっちりと結果を出すことを目標にしている。それは、この第2週に訪れるかもしれない。
コメント