イタリアの白い道ストラーデ・ビアンケ。
しかし、2021年にあの伝説的な勝利を挙げたマチュー・ファンデルプール(Alpecin-Premier Tech)は、今年も、そしておそらく今後数年間も、シエナの白い未舗装路(ステッラート)に姿を現すことはないだろう。
彼が欠場を決めた理由は、過密なスケジュールでも、コンディション不良でもない。
これについて、ゼネラルマネージャーであるクリストフ・ルードホーフトの証言とマチュー・ファンデルプールが、このレースに見切りをつけた背景を紐解いてみよう。
パンチャーを拒絶する「獲得標高」のインフレ

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マチューがストラーデ・ビアンケに出場しない最大の理由は「高低差」だ。
彼がエガン・ベルナルやジュリアン・アラフィリップらを圧倒的なスプリントでねじ伏せ、優勝を飾った2021年大会の獲得標高は3,072mだった。
当時はまだ、マチューやワウト・ファンアールトのような重量級のパンチャーでも、登坂力のある選手と互角に戦える絶妙なバランスが保たれていた。
しかし、近年のコース変更により事態は一変する。実際の獲得標高の推移を見てみよう。
- 2021年:3,072m マチュー・ファンデルプール優勝
- 2024年:3,669m タデイ・ポガチャル優勝
- 2025年:3,716m タデイ・ポガチャル優勝
- 2026年:3,567m
今年はポガチャルの圧倒的な独走を防ぐためか、距離が213kmから201kmに短縮され、未舗装路も一部削られた。だが、それでも獲得標高は3,500mを優に超えている。
以下はクリストフ・ルードホーフトGMのコメントだ。
獲得標高を見ると、この数年でコースの性質が全く別物になってしまったことがよく分かります。
その通りだ。5年前と比較して、獲得標高が20〜25%も増加している。これはマチューのような体重のあるパンチャータイプの選手にとって、限界を完全に超えた数字だと言わざるを得ない。
マチューが得意とする、ロンド・ファン・フラーンデレンのような過酷なクラシックレースとは違うのでしょうか?
ロンドは約270kmという長丁場だが、獲得標高は2,000m強だ。今のストラーデ・ビアンケは距離こそ200km程度だが、3,500m以上も登らされる。
もはや完全に山岳クラシックへと変貌してしまったんだよ。
やはり、タデイ・ポガチャル選手のようなクライマーの存在が大きいですか?
現在のコースレイアウトで、ポガチャルやトム・ピドコックのような、100%のコンディションで挑んでくる生粋のクライマーたちを相手にするのは、物理的に極めて困難だ。
マチュー自身は、このレースについてどう思っているのでしょうか。彼はかつてここで素晴らしい勝利を挙げています。
彼自身も、この状況を残念に思っているはずだ。ストラーデ・ビアンケが非常に魅力的で美しいレースであることに変わりはないのだからね。
だが、「勝つチャンスがないなら、出場しない」。これが我々の哲学だ。今のレイアウトでは、彼にできることはほとんどない。
我々はロンドやパリ〜ルーベといった、彼が本当に勝負できるモニュメントに100%のピークを合わせることに集中するよ。
フランダースのクラシックレースに出場する選手たちと、より登坂能力に優れたタイプの選手たちが、ストラーデ・ビアンケで互いに競い合う時代は、コースがより過酷になったことで終わりを告げた。
特に、砂利道では高度な技術が求められるため、これは非常に残念なことだ。この分野では、マチューが集団のトップ選手だ。
マチュー自身もこれを残念に思っていることは間違いない。結局のところ、魅力的なレースであることに変わりはない。しかし現状はこうだ。現在のレース状況では、マシューが活躍する余地はほとんどない。
Alpecin-Premier Techは、2025年はジャンニ・フェルメルシュがエースナンバーで出場した。7位でフニッシュしたが、タイム差は4分29秒。彼自身もすでにストラーデ・ビアンケはクラシックライダーが戦えるレースではないと明言していた。
登りが増え、獲得標高が増えれば増えるほどクライマー有利となる。これではクラシックライダー、パンチャーが戦えるレースではなくなるのだ。
マチュー・ファンデルプールが、今後ストラーデ・ビアンケに出場することがないのは非常に残念。残された年月が少ないだけに。





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