ツール・ド・フランスで総合優勝したタデイ・ポガチャルは、その気持ちに苦しんでいた。
彼が長年も尊敬していた同胞のプリモシュ・ログリッチを勝利から遠ざけていたことが、彼の胃袋を締め付けていた。相反する感情が渦巻いていたのだ。
ポガチャルはレキップとのインタビューで、当時のことを話しているので聞いてみよう。
相反する気持ち
ツール・ド・フランスでは、最後から2番目の個人タイムトライヤルでタデイ・ポガチャルが逆転。
キャリアを通じてログリッチのサポーターであったポガチャルは、フィニッシュでの彼の威厳に敬意を表した。
その時は、何を感じていいのか本当にわからなかった。すべてが胸の中で絡み合い、相反する感情を抱えていた。
彼の最初のレースから、私はログリッチのファンだった。15歳から20歳の間、私は彼が勝つためにテレビの前で叫んでいた。
そして今、私は彼を打ち負かした人であり、彼の達成を否定した。
だが、それは彼が何年も夢見ていたこと…それは本当に奇妙だった。私は自分自身に言い続けた。これはレースなんだ、これはスポーツだ。私が勝ちたいのは普通だと。
最終的には、すべてを決定づけたタイムトライアルの後、ポガチャルを落ち着かせたのはログリッチ自身だった。
彼が終わって数分後、私はテレビのテントの中にいた。彼は私を見上げて抱きしめてくれた。あの時のことは絶対に忘れない。
楽しむことを許可してくれて、罪悪感を感じるなと言ってくれたようなものです。私のようなファンは、プリモシュの勝利を望んでいたでしょう。
ソーシャルメディアで見たし、彼らが教えてくれたんだ。しかし、私はそれについて何ができますか?何もありません。
ポガチャルは、スロベニアの多くのファンがログリッチがツアーで優勝することを望んでいたことを知っている。
それはポガチャル自身も、数年前までそうだったのだから複雑な気持ちだろう。
二人はモナコに拠点を置き、時々一緒にトレーニングする。
(トレーニング中に)偶然に会ったら、私たちの1人がUターンをして、一緒に続ける。
彼はいい人だ。彼は自分を前に出すのが好きではない。私はレースで彼とよく話している。私にとって、彼はライバルのようではない。
プリモシュ・ログリッチは本当にいい人だ。ツールでも、TTの後にポガチャルを祝福し、最後のパレードでも自らポガチャルに並んで話している。
こんな人中々いないだろう。
懐疑論
フランスのスポーツ紙のインタビューで、ポガチャルは自分の勝利が懐疑的に受け取られたことを認めている。
ツールで優勝した人は誰でも怪しい。それは過去のせいだ。それがサイクリングの歴史となっている。
人には信じられないようなケースが多々ある。それを払拭して尊敬を取り戻す時間が必要だ。それを受け入れて生きていくことを学ばなければならない。
彼はプロになる前に、すでにプロトンでのドーピングの使用について気づいていた。
若い頃はよく話題にされていた。クラブでは、ドーピングは絶対にしないという年間契約書にサインしなければいけなかった。
10年分のサインをした、6月にランス・アームストロングのドキュメンタリーを見た。それがどこに繋がるのか見てみた。今日、私は自転車競技におけるドーピングの使用が大幅に減少したことを感じている。
クリーンなイメージを作り出すには、長い年月がかかるだろう。
だが、いつの日かドーピングに無縁なスポーツとなって欲しい。それは、どのライダーも同じ思いだろう。
コメント