2019 Dirty Kanza 200を獲得したのは、コリン・ストリックランド(Colin Strickland)33歳。
彼は、ワールドツアーライダーが参加した Dirty Kanza 200でプロライダーを置き去りにして独走で優勝した。
2位となったピーター・ステティーナ(当時Trek – Segafredo)に対して実に9分もの差をつけての勝利だった。
これほどのライダーに対して、EF Pro Cyclingはプロとしてストリックランドをワールドツアーに誘った。だが、彼はこの申し出を断った。
Dirty Kanza 200
優勝した彼の元には、電話、インタビュー、写真、メールボックスはスポンサーからの誘いで一杯になった。
ストリックランドはグラベルサイクリングの最大のレースで優勝しただけでなく、2019年のレースに参加した少数のWorldTourロードレーサーを手軽に打ち負かしたことだった。
彼の活躍を見てEF Pro CyclingのGMジョナサン・ヴォーターズは、プロレースに彼を誘った。
是非、彼にパリ~ルーベを走って貰いたかったのだ。そして、ワールドツアーレースを続けながら、グラベルロードへの出場も他のチームメイトと共にして貰いたかったのだろう。
EF Pro Cyclingでは、昨年から「Explore the world」(世界を冒険する)というキャンペーンを行っており、積極的にグラベルレースに出場している。
ラクラン・モートンにアレックス・ハウズ、引退したテイラー・ファニーなどがアドベンチャーライドに出場した。
コリン・ストリックランドもワールドツアーでのクラシックに興味があり、プロとして活躍するというのは夢のような話だった。
彼はグラベルレースと固定ギアのレースであるレッドフッククリテリウムでアメリカでは有名だ。
30歳の時には環境コンサルティングの会社に勤める日雇い労働者として一日を働き、週末には地域のエリートロードチームElbowz Racingで出場。テキサス州とオクラホマ州で数々の厳しいロードレースで優勝している。
だが、交渉から数週間後、砂利サイクリングの最新のヒーローでありパリ・ルーベを戦うために提案されたジョナサン・ヴォーターズの計画は実現しなかった。
現実的な問題
問題は極めて現実的なものだった。
プロロードでの実績のない33歳の新人にいきなり大きな給料は払えない。基準というものがある。
EF Pro Cyclingはグラベルで実績のあるコリン・ストリックランドは欲しい。だが、チームの目指すものはワールドツアーで活躍しているライダーがグラベルロードに出場するということだ。
チームの価値を見出すためにプロレースで実績を出すことが必要なのだ。グラベルレースに優勝するためだけに、ストリックランドを雇うことはしない。
ストリックランドがパリ~ルーベトップ10の実績を出せば、一気に給料は上がる。だが、その保証はどこにもない。
EF Pro Cyclingとプロ契約をした場合、彼が3年間で積み上げてきた、Red Bullとの個人的な取引を含め、構築してきたスポンサーシップのポートフォリオを放棄しなければならなくなる。
プロレースで活躍出来れば良いが、成績が悪ければ1年で契約は切られる。33歳の彼にとっては、現実的な問題が頭をよぎり契約には至らなかった。
コリン・ストリックランドがつかみかけた夢は、現実的な問題によって実現しなかったが、彼が22歳ならば間違いなくプロの道を選んでいただろう。
マイケル・ウッズのような道は開けなかったが、彼はこれからもグラベルレーサーのトップを追い続ける。
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