チーム・スカイのクリス・フルームは2016年のツール・ド・フランスでトップチューブの上に乗って下るというテクニックを見せました。
それどころか、そのままペダリングして下るという妙技を見せて驚かせてくれました。
パンターニも下りでは思いっきり後ろ乗りのポジションでした。どのポジションが一番はやいのかの風洞実験です。
クリス・フルームのポジション
クリス・フルームのトップチュープに乗って走るスタイルは皆さんも一度はマネしたことがあるのでは。
動画で見て貰うと一番わかりやすいと思います。
トップチュープに座っているだけならわかりますけど、思いっきりペダル漕いでますからね。
海賊と呼ばれたMarco Pantaniの象徴的なオーバー・ザ・リヤ・ホイール・クーガーのような降下スタイル。 どのくらいのタイムが短縮されているのか、フルームはパンターニよりも一歩前進して速くなっているのか。我々は疑問を抱いていました。
どのポジションが一番速く下れるのか下りで試すことは出来ないので、Boardmanパフォーマンスセンターで実験を行いました。私たちはウスターシャー州イーヴシャムに向かい、どれが最速ポジションなのかテストしました。
ベースポジション
まず、基本的な位置で測定します。 ペダルを漕いで普通のフラットストレッチに乗るというポジションで比較的直立して座っています。ペダルを踏んだり止めたりすることはできません。
私たちのポジションが異なるスピードでどのくらいのドラッグを生成するかを決定するドラッグ係数(CdA)を測定してみました。
空気抵抗係数(Cd)に前面投影面積(A)を積算したもの
この最初のポジションでは、0.295を記録しました。つまり、35kmに到達するには208ワットの力が必要がです。
ドロップポジション
次のポジションは、ドロップハンドルの下を持つポジションです。
このポジションでは、0.1993のCdAを測定しました。
風洞実験では下り坂の力を発生することは出来ないので、CdAに基づいて位置効率の指標として35kmhに達するのに必要なワット数の計算を引き続き使用します。
このドラッグでは、同じ速度で移動するには154ワットの力しか必要としません。
フルームポジション
フレームのトップチューブに座るのは快適なポジションではありません。
私はこれを30秒以上保持するのに苦労しました。 フルームはこの姿勢でペダルを踏んでいますが、これはとても難しいと思います。
このボジションのCdAは0.1718でした。
フルームのポジションは明らかに計算されたポジションです。 それは私の35キロのワット数がパワーダウンして139ワットにまで下がったことからもわかります。私のベースラインポジションよりも69ワットのパワーダウンです。
非常に大まかな計算では、余分な努力をしなくても約5km速く下れることになります。
しかし、いくつかの欠点があります。フルームのポジションは重心を下げますが、重量も前輪に大きくかかり、ハンドリングの特性が変わり、自転車の安定性が低下する可能性があります。
フルームのようにテクニックのあるプロ選手ならばレースでも使用できるポジションですが、一般ライダーは真似することのないよう慎重である方が良いと思います。
パンターニポジション
マルコ・パンターニ。海賊と呼ばれた男は歴史に刻まれています。彼のとっていたポジションのデータを見ると、それは明らかな理由があるのかもしれません。
パンターニのポジションはCdA 0.1947でした。これはドロップハンドルの下を持つのとあまり変わりません。しかも、このポジションでは下りでペダルを踏むことは出来ません。
おそらく、パンターニは後輪の重量が全体的な安定性を助けることが出来ることを知っていたからだと思われます。
オブリーポジション
グラハム・オブリー自身では「crouch」ポジションと呼んでいるポジション。
「crouch」はしゃがむという意味です。
オブリーは1990年代にアワーレコードに果敢にチャレンジしていた人物です。
このポジションを下りでとるには、道路がまっすぐであり、急な制動を必要とする障害の可能性がない場合となります。
コーナーに近づくと、手を戻してブレーキをカバーする必要があります。
このポジョションのCdAは0.1679でした。これは非常に良いスコアであり、私たちの走りの中で最も速いものでした。
35kmhで移動するのに必要なバワーはわずか137ワットでした。
ポジションは重心が低く、フロントとバックがうまく分散しているので安定感があります。ですが、ドロップをコントロールすることができないのは大きな問題です。
番外編
でも、一番速いのは、やっぱりスーパーマンポジションですよね。
オブリーもアワーレコード挑戦でやってみせたポジションです。でも、これはモットスーパーなポジションで下ってます(^^)
イタリア人サイクリストのマイケル・ゲーラが見せてくれます。
結論
オブリースタイルがどんな状況でも最速のポジションだと私達は結論出来ることができるでしょうか? それは無理ですね。
誰もが違った体型をしています。そして、風がライダーに当たる角度である単一のヨー角だけをテストしたという事実があります。 その角度は0°であったが、より一般的にはライダーは0-15°の範囲を経験することになります。
空気力学の大部分と同様に、科学の複雑さは、それほど多くの外挿法を作るのが難しいということを意味します。
もしあなたが本当にあなたのために最速のものを知りたいのであれば、風のトンネルへの旅に勝るものはありません。
でも、まっすぐで安全な場所ならばオブリーポジションが一番速いですね。
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