今年のツール・ド・フランスはあらたな試みがいつくかありました。
チーム人数が9人から8人に。コースが100キロなのに山岳だらけで平地なしのレース。
見る側を面白くしようとした試みもあったのですが、実はそれらがスプリンターには過酷過ぎたのです。
チーム人数の削減
UCIワールドツアーレースを主催するA.S.O.とRCSスポルトが、出場人数の縮小に乗り出しました。
三大ツールである、ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャでも1チームの人数を9名から8名に縮小したのです。
変更は、以前から言われてましたが、2018年から実施されました。
そして、UCIの会長は
「最終的に、グランツールの1チームの人数は6名にしたい」
と発言。
人数が減ることによって、チームスカイが弱体化したかというと全く変わらなかった。
アシストが一人減っただけの話です。
ですが、その人数が減ったことで困ったのがチームのスプリンター。
9人から8人に出走人数が縮小した結果、いつくかのチームはスプリントステージで形成されるグループットのサイズを縮小しました。スプリンターの代わりにGCのライダーを選ぶようになったのです。
つまり、スプリンターのアシストが一人減ったということですね。スプリンターのアシストはゴール前だけでなく、最も重要なのはゴールまでスプリンターを連れていくことです。
タイムカットにならないように、山岳でもアシストをする重要な役目の一人がいなくなったのです。
特化したライダーとの差
近代的トレーニングによって専門分野に特化した選手が多くなっています。山岳スペシャリスト・タイムトライヤル・アタッカー・スプリンター。
特に、スプリンターと山岳ライダーのギャップが大きく開いたことが挙げられます。
Jasper Stuyven
「今年のペースは非常に速いと感じている」
とJasper Stuyven(Trek-Segafredo)は語った。
「最初の山の日から、本当のスプリンターが[カットオフ]時間に入るために戦わなければならないことは明らかだった。」
小規模なチーム、厳しいカットオフタイム、短いコースでも山岳の厳しいコースでは、ツアーのスプリンターはタイムアウトと戦っています。
第11ステージ後の選手の言葉
今年のツール・ド・フランスでは山岳コースに入り最速と言われるスプリンターが次々とタイムカットでツールを去りました。
第11ステージのアルベールヴィル ~ ラ・ロジエール・エスパス・サン・ベルナルド 108.5kmに3つの山岳が組み込まれたレースでは、
- マーク・カヴェンディシュ ディメンションデータ
- マーク・レンショー ディメンションデータ
- マンセル・キッテル カチューシャ・アルペシン
3名のスプリンターがタイムアウトに。
この第11ステージは、ツール主催者のASOによって、取り入れられた実験的コースであり見ている側は面白いレースですが、やっている選手は大変なことに。
ハインリヒ・ハウスラー
ハインリヒ・ハウラー(バーレーン・メリダ)は、
「それは大変だった。私はこれまで、同じようなステージを走ったことがないさ。短いコースはタイムアウトを避けるために、スプリント・グルペットが厳しいテンポで登らないといけなんいだ。そんなの無理だよ。
生き残るのに必死で、次のアルプ・デュエズでは力が残ってなかったさ。」
デゲンコルプ
John Degenkolb(Trek-Segafredo)は、
「とにかく問題はスカイが強すぎることさ。彼らは自分たちのペースをあげている。彼らはフルメンバーで先頭を引くのでスプリンターとの差は広がるばかりさ。」
TREKチームはステージ11と12で、アルプスを生き残るための戦略を立てていました。
ペース戦略として、チームメイトのマイケル・ゴーグルは、デゲンコルプと一緒にコル・デ・ラ・クロワ・デ・フェルとアルプ・デュエズのペースを上げていた。
デゲルコルプは、32分遅れでレースをフニッシュ。
「最初の登りで自分がペースを上げないようにすることが重要だった」
とDegenkolbは語った。
Degenkolbは、後半に頑張るパターンを選択です。
ペーター・サガン
Bora-Hansgroheチームは、タイムカットがステージで約38分かかると予測した。
ディレクターは、ペーター・サガンがコル・デ・ラ・マドレーヌの頂上で限界近くまで乗り込み、フロントグループにできる限り近づくように指示。
その後、Saganは先頭を追いかけて下りを快適なリズムで走ることに。彼はチームメイトのDaniel Ossと一緒にフィニッシュラインに到達。
サガンの戦略は、最初の山岳をフロントグループ近くで終えることで、下り坂を前のグループと同じスピードで走ります。
サガンの場合には前半の山岳を頑張り、後半はタイムアウトにならないように走る戦略でした。
ロルフ・アルダグ
16年間のプロキャリアでツールを走ったディメンション・データのマネージャ
「これほどのステージを見たことは今まで覚えていない。第11ステージを全力で走ったんだよ。次の大きなステージの戦略なんて立てようがないじゃないか。
レースが3時間半じゃあ、タイムを取り返す時間がないんだよ。」
チーム・スカイのペース
パワーメーターをレースで使用させない方向であるとASOやUCIが盛んに言っています。
来年のツールからは、パワーメーターが使えなくなる可能性があります。
実際のレースでは、先頭を走るチーム・スカイの選手は他チームの選手がアタック出来ないペースをパワーメーターを使って作り出していると言われています。
無線で、チームカーからの指示もされているでしょうね。
実際に、今年のジロ・デ・イタリア第19ステージでみせたフルームの80キロの独走では、メーターを確認して350Wで走っているのが画像でも確認出来ました。
このチーム・スカイの誰のアタックも許さない山岳でのペースは、スプリンターにとっては過酷すぎたのです。
まとめ
チーム出走メンバーの縮小・回復出来ない山岳だけのコース、厳しいタイムカットの時間。
サガンやアルノー・デマール(FDJ)は、ツールに備えてツールド・スイスを走ります。これは厳しい山岳コースになれる為です。他のスプリンターにはこの山岳のトレーニングが足りないのではないかともいわれています。
クイックステップのディレクター、ブライアン・ホルム(Brian Holm)は
「タイムカットが厳しすぎると思う。」と述べています。他チームからも声が上がっています。
ただ、これからのツールも、スプリンターとの距離は拡大する一方かもしれません。
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