2025 ツール・ド・フランス第19ステージ。 土砂降りの雨が降り注ぐラ・プラーニュの頂上で両手を突き上げたのは、テイメン・アレンスマン(INEOS Grenadiers)だった。
ピレネーでのステージ優勝に続き、アルプスの難所も制して掴み取ったこの「ツール2勝」は、オランダのファンを熱狂させただけでなく、彼自身にとってもキャリアの転換点を象徴する出来事となった。
かつては期待の若手というプレッシャーの中でメンタルを消耗し、自分自身を見失いかけていたアレンスマン。 そんな彼が、どのようにして迷いを断ち切り、世界最高峰の舞台で本来の力を発揮できるようになったのか?
その復活の裏には、同じオランダの偉大な先輩、トム・デュランとの対話があった。 「速くなるために必要なのは、苦しむことだけではない」。 アレンスマンが明かした、デュランからの金言とその変化について語った部分を紹介。
ハッピーであること
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2024年の冬、トム・デュランと話す機会があったそうですが、それはあなたにどのような影響を与えましたか?
彼との出会いは本当に大きなものだった。 ポッドキャストで話した内容もそうだが、マイクの電源が切れた後の会話でも、トムは本当に多くのことを共有してくれた。
「何かあったらいつでも電話してこい」と言ってくれて、実際に僕がヴォルタ・アン・アルガルヴェで調子を落とした時も、彼に電話で相談したんだ。
具体的に、どんなアドバイスをもらったのでしょうか?
トムと僕は、経験してきたことが少し似ているんだ。 彼はこう言った。
「誰もが自分を証明しようと必死で、市場に出回る新しいわずかな利益を追い求めている。でも、その過程で自分自身を見失ってしまうことがあるんだ」と。
そして、一番響いたのはこの言葉なんだ。
「もう少しハッピーであるように努めてみれば。それが結果的に、君をより速く走らせることになるから」
「幸せであること」が速さに繋がる。その言葉をどう実践しましたか?
例えば、トレーニングでも無理に自分を追い込むのをやめた。 1月のテネリフェ合宿では、毎日のように登坂で遅れていたけど、以前のようにストレスを感じることはなかった。
今はワット数が低くても、レースになれば出ると自分を信じて、リラックスして過ごした。 それから、栄養士をつけるのもやめたんだ。
これが理想的なプランだと言われても、それが自分に合わなければ意味がない。今は自分の体の声を聞いて、食べたいものを食べている。
もしチョコレートが食べたければ食べる。ただし、以前なら我慢してストレスを溜めていたところを、今は「ミルクではなくダークチョコレートにする」といった小さな工夫で楽しむようにしている。
そうやって精神的な負荷を取り除くことが、今の結果に繋がっていると信じている。
テイメン・アレンスマンは、ジロ・デ・イタリアにエガン・ベルナルと出場との噂がある。ジロとは相性がよさそうなのでステージが狙えるか。ケヴィン・ヴォークリン、オスカー・オンリーも移籍してくるので、グランツールのエース争いは厳しくなる。
それでもハッピーな心で走っていれば結果はついてくる。それを証明したのが2025 ツール・ド・フランスでのステージ2勝だ。



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