世界ロード王者であり、サイクリング界のスーパースターであるタデイ・ポガチャルが、ロードレース界の長年のカレンダー慣習に対する大胆な見直し案を提言し、議論を巻き起こしている。
ポガチャルは、ジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャの開催時期を入れ替えるべきだと主張している。
この提案はライダー組合(CPA)のアダム・ハンセン会長からも即座に支持を得ている。
何故入れ替え?
Tadej Pogacar wil wissel tussen Giro en Vuelta op wielerkalender:https://t.co/BiOElCM3w1
— Raymond Kerckhoffs (@raykerckhoffs) November 29, 2025
ポガチャルは、前から言っていたけど、ブエルタとジロを入れ替える提案の背景には、二つの理由がある。
5月に開催されるジロ・デ・イタリアでは、寒さや雪といった悪天候に見舞われることが多く、ライダーの安全とレースの質の低下につながる。
毎年のように、まだ雪があるからコース短縮とか、峠は削除とか言っている。
一方、ブエルタ・ア・エスパーニャは現在8月下旬〜9月に開催されている。ポガチャルは、ブエルタを5月に前倒しし、ジロを8月下旬に延期することで、両レースの天候条件がより良好になると指摘している。
現在、7月のツール・ド・フランスに続いて8月下旬のブエルタを狙うのは、期間が短く難易度が高いとされている。
ポガチャルは、ジロを8月末に移動させれば、ツール・ド・フランスとジロ・デ・イタリアという組み合わせのグランツール・ダブルヘッダーに挑戦しやすくなり、結果としてより多くのトップライダーが両レースに参戦する機会が増えると言っている。
タデイ・ポガチャルのコメント
ジロとブエルタの日程を入れ替えればもっと良くなるといつも言っている。その理由は2つある。気象条件と参加ライダー数の両面ではるかに良くなるはずだ。
なぜ誰も今までそう考えなかったのか分からない。日程を逆転させることは、両レースにとって利益になるだろうと常に想像している。
タデイ・ポガチャルは、ブエルタ制覇も狙っているがツール後のブエルタは日程的に厳しい。ヨナス・ヴィンゲゴーも2025年はダブルを走ったけれど、その後休養を余儀なくされている。
ただ、数年後、いや10年先には8月の炎天下に自転車で走るということは不可能になっているかもしれない。加えてスペインは猛暑もある。イタリアが涼しいかはわからないけど、山に雪があることはないだろう。
コロナの時の2020年には3大ツールが後半に集中。ただ、大昔はブエルタとジロの開催時期は逆だったはず。まあ、中々難しいだろうけど気候変動を考えると時期は考えないといけなくなるのは間違いない。
【修正】
コメント欄でDragonMasterから詳しい情報をいただきました。以下引用
ジロは1909年の第1回大会から一貫して㋄~㋅の晩春から初夏
にかけて開催されています。 唯一の例外がコロナ禍の影響で開催時期が10月に変更された20 20年の第103回大会です。 対してブエルタは1935年の第1回大会から1994年開催の第
49回大会までは㋃~㋄の春に開催されていました。
さらに詳しく解説してくれているのでコメント欄を読んでいただけばジロとブエルタの開催時期についてわかります。
さらにジロ・デ・イタリア主催者の思いも説明してくれています。



コメント
>大昔はブエルタとジロの開催時期は逆だったはず
これ勘違いですよ。 ジロは1909年の第1回大会から一貫して㋄~㋅の晩春から初夏にかけて開催されています。 唯一の例外がコロナ禍の影響で開催時期が10月に変更された2020年の第103回大会です。
対してブエルタは1935年の第1回大会から1994年開催の第49回大会までは㋃~㋄の春に開催されていました。 時期的にジロとの間隔が殆どなく、年によってはモロに日程が被っていたりしていました。 なので当初ブエルタは地元スペインの選手(もしくはスペイン所在のチームの選手)以外だとツールへの調整レースと割り切って参加する、若しくはブエルタ以上に厳しい山岳コースが登場するジロを嫌ったスプリンター系選手が参加するといった比較的ローカル色の強い大会でした。
……まあそんな日程であったにも関わらず1973年のエディ・メルクスみたいな化け物はブエルタ第28回大会、開催期間4月26日~㋄13日(確か3ステージ程午前、午後に分けて前半、後半という形で2レース行っていた筈なので日程的には若干短い)と㋄18日~㋅9日に行われたジロの第56回大会を連続優勝、しかもジロに至っては第1ステージでマリア・ローザを獲得して以後全ステージ維持し続けるという一寸意味の判らない強さを発揮してましたからね……。
>毎年のように、まだ雪があるからコース短縮とか、峠は削除とか言っている
これ問題と言えば問題なんですがジロという大会の根本的な理念から言うと外し難い問題でもあるんです。 ツールに比べ山岳コースの難易度(勾配)が高い事もジロの特徴ですがもう一つ、単なるコースレイアウト上の難度だけではなく自然環境の厳しさとの闘いという側面もジロにはあるんです。
なのでイタリア人は誇りをもって『ツール・ド・フランスが世界最大のレースなら、ジロ・デ・イタリアは世界最高のレース』と言うんです。
実際に参加する選手の立場からすると開催時期の移動というのは本気で考えてもらいたい問題なのでしょうけど大会の基本理念からすると主催者として『はい、変えましょう』とは言えない問題なんですよね。
詳細な情報と深い考察をありがとうございます!非常に勉強になりました。
ブエルタ・ア・エスパーニャとジロ・デ・イタリアの開催時期に関する歴史的な経緯を、具体的なデータと例外(2020年のジロ)まで挙げて訂正していただき、感謝申し上げます。
開催時期の変更は、選手の安全やコンディションを考えれば議論されるべき問題ですが、大会の基本理念を崩すわけにはいかないという主催者側のジレンマもよく理解できました。
貴重なご指摘と、自転車競技の歴史・文化に対する深い知識をありがとうございました!
今回もコメント誘導して詳しい情報の共有をさせて貰いました。また教えて下さい