テストステロンというと、どうしてもドーピングを思い浮かべてしまう。
2023年8月、UKアンチ・ドーピング(UKAD)は、元チームスカイのドクター、リチャード・フリーマンが、4年間の禁止処分を受けている。
これは、2011年にマンチェスターのナショナル・サイクリング・センターで「テストジェル」30袋を注文して所持していたからだ。
テストステロンとは?
テストステロンとはホルモンの一種で、男性の場合、睾丸から血液中に分泌され、体内の器官や組織に運ばれ、多くの機能を刺激する化学伝達物質である。
元々は身体の中にある物質だ。
簡単に説明すると、テストステロンは
- 除脂肪体重の維持
- 増加認知機能の向上
- 骨密度を高め、骨粗しょう症などの予防に役立つ
- ワークアウトからの回復能力を高める
- 筋肉や骨格の成長を助ける
- 高い集中力、やる気を促す
これが主なメリットで良いことずくめ。筋肉が酸素を必要とするスポーツでは、赤血球の生成プロセスを促進することも重要となる。
そして、心理的なものを利用したパフォーマンス向上もある。テストステロンは、より自発的な努力を促す行動適応に寄与することが研究で示唆されている。
例えば、セッション中によりハードに取り組むようになるそうだ。やる気スイッチというやつか。
これは、運動前の唾液中テストステロン値と、自己選択したレジスタンストレーニングの負荷および女性ネットボールプレーヤーのパフォーマンスとを関連付けた研究で強調されている。
年齢によって低下
40歳前後から、テストステロンレベルは毎年約1%ずつ低下する。
その理由はまだ不明だが、コルチゾールレベル(ストレスホルモン)の上昇、体格の減少、テストステロンの生成を助ける黄体形成ホルモンの変化が原因である可能性が示唆されている。
2011年にハワイで開催されたアイアンマン世界選手権での研究は、この運動誘発性のテストステロン低下を浮き彫りにした。
長距離トライアスロン選手22人を検査したところ、正常と考えられる血清テストステロン濃度を示したのはわずか9人だった。
女性サイクリストもこのテストステロン低下に耐え、男性の10分の1程度の濃度で体内を循環している。
女性の場合、テストステロンはエストロゲンに変換され、生殖、成長、健康全般に重要な役割を果たしている。
男性では、減少すると更年期障害や自律神経失調症など様々な症状が現れてしまう。
体重増加
ありがたいことにウェイトトレーニングをするとテストステロンの減少に効果がある。
定期的なジムワークは、テストステロンレベルを上げるという点で、持久的な運動とは正反対であり、35歳以上の人は1週間を80%のライドと20%の筋力トレーニングに分けるべきだという強い主張があるのはそのためだ。
筋力トレーニングとは、ウェイト、自重、プライオメトリックスのどれでもいい。
どれを選んでも、パワー出力、回復速度、スタミナがすべて上がる、あるいは少なくともロスが減るというエビデンスがある。
どのエクササイズが有効かというと、脚のスクワット、デッドリフト、ランジは欠かせない。
活性化された筋肉量の多さがテストステロンの反応に関係するというのが、一般的な見解となっている。
筋トレセッションの絶対的な負荷(量と強度)もテストステロン反応に関係していると考えられている。
食事に関する懸念
テストステロンの量を減らさないためには、食生活も見直すべきだ。
テストステロンはコレステロールで構成される分子なので、サバやナッツ類、良質なオリーブオイルなど、良質な脂肪を摂るか、タラ肝油のサプリメントを摂ることが良い。
学術誌『Alcoholism: Journal Alcoholism: Clinical and Experimental Research』誌は、アルコールがテストステロンのレベルを低下させることも明らかにしている。
これはアルコールがテストステロンの合成を阻害するためかもしれない。
それでも、それが運動後の至福の一杯ならば、低アルコールの選択肢にもっと手を伸ばすのが良い。きっぱりと止めるというのは、逆にストレスになりそうですね。
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